爺の遺言〜惚れて使えばアバタもエクボ ・第2回


アリフレックス16ST その2

 

16mmフィルムを使う

 ボディ本体の内部には、100フィート(30.5m)の長さのフィルムを巻いたスプールを装填します(写真1)。16mmフィルムは、本来、両側にフィルム送りの孔が開いた「両目」でしたが、スーパー16mmの普及に伴い「片目」が主に供給されています(写真2)。毎秒24コマで撮影すると、1分当たり36フィート消費しますから、2分45秒ほど撮影できます。400フィート(122m)では11分強撮影できます。

■フィルムの装填
 フィルムの装填は、写真3のようにします。

 最も難しいのは、レジピンと掻き落しピンの狭い隙間にフィルムを通すコツです(写真4)。簡易には、なるべく暗い場所で、肉眼で見ながら装填し、5フィート空写ししてから、本番を撮影します。

 慣れない助手が装填すると、時間がかかってしまい、5フィート以上露光されてしまうことがありますが、画面の側面が赤く光を引いてしまう原因です。これを避けるために、熟練した助手は、ダークバックを使って手探りで装填します。これができるようになるとようやく「一人前」です。爺も助手時代はダークバッグ装填の時間を短縮する練習をしたものです(写真5)。メンバーにトライさせると、最初のうちは自分の能力の無さに愕然としているのがよく判ります。フィルムの装填は実際にやってみなければ理解できません。読者の中で体験したい「物好き」がお出でになれば、歓迎します。

モーター

 アリ16STを購入すると、DC 8Vで駆動する「バリアブルスピードモーター」が付属しています(写真6)。このモーターは、毎秒4〜50コマ程度まで連続して調整できます。ただし、最近のモーターのように「クオーツ制御」ではありません。電圧を摺動抵抗で変化させて回転数を制御する機構ですから、バッテリーの電圧が落ちてくると、カメラ後部から助手が回転を調整して24コマに合わせ続けなければなりません。8Vのバッテリーが入手しにくいからといって12Vで駆動すると、抵抗が焼き付いてしまい、24コマの接点部分を使えなくなり、23コマや25コマで使う羽目になります。

 現在、ルームのバッテリーは8.4Vや7.2Vのラジコン用を使っています(写真7)。また、携帯電話用のバッテリーをオンボードで取り付けるボディも試作しました(写真8)。根本的な解決は、汎用の12V(BP-90タイプなど)バッテリーをそのまま使って、8Vに電圧を落とす回路を組み込んだシステムです(写真9)。モーターそのものは「電気ドリルのモーターを流用した」という説、現代では珍しい8Vのバッテリーは、「フォルクスワーゲンのバッテリーが8Vで流用できた」という説もあります。どんな条件でも回るタフさが要求されたのでしょう。


荒木 泰晴

About 荒木 泰晴

 1948年9月30日生まれ。株式会社バンリ代表取締役を務める映像制作プロデューサー。16mmフィルム トライアル ルーム代表ほか、日本映画テレビ技術協会評議員も務める。東京綜合写真専門学校報道写真科卒。つくば国際科学技術博覧会「EXPO’85」を初め、数多くの博覧会、科学館、展示館などの大型映像を手掛ける。近年では自主制作「オーロラ4K 3D取材」において、カメラ間隔30mでのオーロラ3D撮影実証テストなども行う。

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