オタク 手塚一佳の自腹レポート〜EOS-1D Cを小規模撮影で使いこなす・第4回
撮影編 その2
Logならではの撮影方法
EOS-1D CのCanon Logは、8ビットの狭いMotionJpeg領域に載せるLogガンマとはいえ、立派な対数ガンマ撮影だ。通常ガンマでは無駄になっているガンマの白と黒の部分を活用し、人の認知しやすい明度域を白と黒の方向にシフトすることで拡張して記録し、それを編集時に仮想化された色空間上に書き戻すことで、通常の映像データよりも多くの色調を記録する仕組みだ。
そのため、撮影方法がだいぶ通常のビデオとは異なってくる。現場の正確な色を撮るよりも、より多くのダイナミックレンジを収録するように心がけて撮影すべきなのだ。
Log撮影ではなにもかもフラットになってしまい、特にホワイトの領域が減ってしまうため、今までの少人数ビデオ撮影時でよくやっていたような18%のグレーチャートを被写体に持ってもらって見た目で合わせる方法ではホワイトバランスや露出が取りにくい。
カメラ本体のマニュアルホワイトバランスの機能を使って、それを基準としてホワイトを取る場合、EOS1D Cではいちいち写真を撮影して登録になる上に、スチル撮影時にはLogがかかった状態での撮影では無いため、正直本当にそれでいいのかは不安なところがある。
そこで筆者が使っているのがカラーメーターだ。
カラーメーターは被写体の位置からカメラと光源を捉えるようにして使う。
EOS-1D Cの「WB」ボタンの「K」機能から色温度を入力するやり方は、カラーメーターで一発で色温度を出してそれを入力するだけなので、簡単に、しかもちゃんと被写体部分だけの光源色温度を見て合わせることが出来る。
もちろんEOS-1D CはLog撮影ではあるので、ある程度は後からいじれるため、そこまで正確な色温度は必要ない。必要ないのだが、元が適正ならばより多くの色を納められることになるため、筆者はこの一手間を惜しまない。
色温度を決めてしまえば、後は露出を決めるだけだ。
露出に関しては、私は正直、カメラ本体の露出計に頼っている。「INFO」ボタンを何度か押すと液晶右上に出てくる簡易波形の「ヒストグラム」が優秀なので、それで、露出範囲内をなるべく広く使ってなるべく多くの要素を入れるようにしているのだ。
この「ヒストグラム」は、特にNDを可変フィルタで決める場合には極めて優秀な機能だ。
まず、絞りをF11程度にしてから18%グレーの反射板を用意し、環境の光を受けるようにして画面一杯に入れる。この状態でISO感度(ノイズとダイナミックレンジを考慮して、320~12800の範囲)を使い、おおまかに中央にピークが来るようにする。その後は、実際の撮影風景を映し出し、時々18%グレーを画面に入れてそれが中央に来ているかを確認しつつ、とにかくなるべく多くの色と光を飛ばさずに入れられるように、ISOと絞りで追い込んで行く。これで間に合わなかったり、初めからISO範囲では間に合わず絞りが欲しいボケ範囲を外れてしまいそうだったらNDフィルタの出番だ。動画撮影の場合にはシャッタースピードは決まっているので、スチルよりもこの辺は機械的に決める事が出来るだろう。
このやり方の場合、最初にカラーメーターで色温度を決めているので、色が狂う心配が無いのが非常に楽だ。ただし、安いNDフィルタを使うと色が付いてしまうため、単純に色温度だけで決めたカラーでは合わないことがあるから要注意。
もちろん、Log撮影ではあるから、INFOボタンを押して出てくるヒストグラム波形内に上手に映像を収めていれば、後から何とかなるものではあるのだが、後の作業の手間を減らすためにも、少なくとも中間値の設定はしっかりとやっておきたい。
また各シーンの頭にカラーチャートを写しておくと、後からそれを基準にLUTをつくれるので大変便利だ。
[次回 撮影編 その3へ続く] アイキャッチ モデル:すずき えり