Libec TH-650HD〜小型ビデオカメラやDSLRに適した小型ビデオ三脚
平和精機工業のLibecブランド(以下Libec)エントリーモデルの三脚といえば、持ち運びに便利で価格帯も低めに設定されていることから、ソニーHVR-Z5JやHXR-NX5Jなどの業務用小型カメラや、キヤノンEOS 5D MarkⅢなどの動画撮影が可能なデジタル一眼、家庭用カメラなどの組み合わせで世界中から愛用されている。
そのLibecから、エントリーモデルの三脚として長年親しまれている「TH-650DV」の後継機として「TH-650HD」が2014年4月15日に発売になる。それに伴い、ドリー「DL-2」の後継機となる「DL-2B」も同時期に発売となる(どちらも従来製品は在庫がなくなり次第販売終了となる)。
今回、この新製品の2つを筆者が使用し、使い心地や利便性などを検証してみた(写真1)。
小型ビデオ三脚 TH-650HD
まず前モデルとなるTH-650DVから大きく変更になったところだが、クイックシューのネジが前後50mmの範囲でスライド可能になったことが挙げられる(写真2)。これまでのTH-650DVではネジがスライド式ではなく、三脚にカメラを乗せた場合、バランスを取ることが難しかった。しかし、今回のTH-650HDでは、上記の変更によりバランスをとることが可能となった。これは後で述べるがカメラワークに大きな効果をもたらしている。
そのクイックシューだが、搭載された1/4ネジの裏につまみが付いているのでマイナスドライバーなどを準備する必要がなく簡単に取り付けることができる(写真3)。従来製品のTH-650DVのようにビデオボスというピンのような突起が付いておらずネジが1つしかないのだが、クイックシューの表面にゴムラバーがついていて、滑り止めのように表面に凹凸が付いている。よって、ネジが1つにもかかわらずしっかりとプレートを取り付けることができ、三脚の検証中にネジがゆるむことはなかった。
ここで注意しておきたいのが、クイックシューレバーも形状が変更になったことで、クイックシュー自体が前モデルとの互換性がなくなったことである(写真4)。よって、前モデルと同現場で使用する場合は、新旧三脚が入れ替わることがないように配慮しなければならない。なお、クイックシューはこれまでと同様に上から乗せるだけでロックがかかるタッチ&ゴーの仕様になっている。
これら新機能が業務用として使う上でとても大きな役割を果たしている。カメラのバランスが取れていない三脚でのカメラワークは非常にやりづらく、このようなエントリーモデルでは、これまで特に苦労してきた方も多いだろう。今回筆者はソニーHVR-Z5Jを取り付け使用してみたが、きちんとバランスが取れていればティルトした状態で手を離してもチルトロックをかけずにその状態を保つことができ、ピタッと止まった(写真5)。もちろん、ワイコンを取りつけてもバランスをとることが容易にできる。バランスを取るのに初めは少々時間がかかるかもしれないが、これまでバランスの悪さによるカメラワークに悩まされていた方は、ぜひ一度試してもらいたい。
カメラワークだが、この三脚はパンとティルトの油圧が変えられる構造になっていないものの、ある程度の粘りがありスムーズに行える。実際に筆者が使用した感じだと、パンやティルトの出だしでの引っかかりや、カメラワーク中に油圧の粘りが抜ける感じ、止めでの油圧や三脚のねじれにより少し戻る感じもなかったのは非常に好印象で評価できる。実際にスムーズな出だしと止めでピタッと止めることが可能であった。さらに、ゆっくりとしたカメラワークを行ってみたところ、非常にやりやすいと感じた。これは、もちろんクイックシューのネジがスライド可能になりバランスが取れるようになったことも大きく影響していると考えられる。
ただ、ある程度の粘りがあるので、素早いカメラワークを行うことはこの軽い三脚では少々困難に感じた。三脚自体が軽いので、素早いパンを行うと三脚自体が動いてしまう。なにかに固定したりできれば素早いカメラワークもできるかもしれないが、このようなパンやティルトの粘りを調節できない三脚では、素早いカメラワークと非常にゆっくりとしたカメラワークを両立させることは困難であろう。エントリーモデルに求めるには贅沢かもしれないがパンとチルトの粘りが調節できるとより業務用として使用する場合はありがたい。ちなみに、見た目的に大きく変わったのがグレーからブラックにカラー変更となったことだ。これまでより、高級感のある三脚に見え、カメラが目立ってはいけない現場でもそのまま使用できるだろう。
もちろんTH-650HDでも、従来製品同様、軽量性とコンパクトさは引き継がれている。筆者が実測したところ重量が約3kg、付属のケースに収納すると長さが80cm程度となる(写真6)。
このように収納できると、ソニーHVR-Z5Jを持って現場まで1人で電車移動といった場合でも、コンパクトな機材ですむので非常に楽である。またここまでコンパクトなのにもかかわらず、3段の高さ調節が付いているため70c~150㎝まで調節が可能で、一番高くした場合、HVR-Z5Jの液晶モニターがちょうど筆者の目線の高さ(筆者の身長は171㎝)にきた(写真7)。スプレッターはミッドスプレッター(中間スプレッター)が付いているので、不安定な場所でも立てやすくなっている。もちろんここまで高さを挙げてもスムーズなカメラワークが可能であった。
TH-650HDはエントリーモデルというだけあって、三脚を扱ったことのない人でも一目見ればすぐに使用できるだろう。高さ調節から水平のとり方までシンプルな構造になっており、クイックシューの取り付けさえマスターしてしまえば誰にでも扱える三脚となっている。価格も非常にリーズナブルとなっており、この価格でこの使い心地は、本レビューをご覧になっている方々にもお勧めしたいところである。
ドリーDL-2B
Libecでは、現在4種類のドリーラインナップがある。「DL-2B」はそのなかで一番リーズナブルなタイプでTH-650HDと組み合わせで使用することが可能である。前モデルの「DL-2」から変更になったところだが、本体カラーがTH-650HDと同様、グレーからブラックに変更になったことである。これにより以前より高級感のある見た目になっているほか現場であまり目立たせたくない舞台前などのオペレーションでも問題なく使用できるだろう。そのほか、三脚の取り付け部分が前モデルと比較して若干変更になっているが、その部分の変更による機能性の変化はない。
なんといっても、このドリーの特徴はセッティングが簡単ということだろう。TH-650HDを実際に取り付けてみたが、かかった時間は1分であった。持ち運びの状態から開くだけでロックがかかり(写真8)、三脚の下の丸いゴム部分をスライド式の固定器具で固定して、ネジで止めるという簡単な構造になっている(写真9)。固定部分もしっかりとしており、ドリーを三脚に取りつけたまま持ち上げての運搬も可能であった。ただし、他社の三脚を取り付ける場合には、少々工夫しなければしっかりと固定できない。他社製品との連動性がもう少しあれば非常にありがたく、今後に期待したい。
そして重要な使用感だが、HVR-Z5Jを取り付けたTH-650HDとともに使用してみた。ドリーの速度をいろいろ変えてみたところ、スムーズなドリーワークが行えた。しかし、早いドリーワークを行った際、タイヤの付け根の部分が少しぐらつき、画がぶれてしまった。これは、ほかのドリーでもたまに見られる現象なのでドリー全体の課題かもしれない。
ゆっくりとしたドリーワークや、カメラのポジションチェンジがある場合の収録では非常に使い勝手がいい。もちろんタイヤロックも付いていて、ONとOFFが書かれており、ひと目で確認できる(写真10)。ただ、ロックをかけてカメラを操作しようとすると、タイヤの付け根部分にはロックがかかっていないため、その部分の揺れがカメラワークに影響した。タイヤロックがタイヤの付け根部分も同時にかかるなど、今後に期待したい部分である。
なお、このDL-2Bも非常に軽量となっており、持ち運びに便利である(写真11)。ドリーを多く用いる現場や機材の多い現場でコンパクトにまとめたいときなど多くの場で活躍できるだろう。前モデルとの大きな機能性の違いはないもののコンパクトで使用しやすい構造となっている。いろいろな種類のドリーがあるなかで、現場の状況や使用する目的によってそれぞれあったものを使用するという意味で、1つ購入しておくと良いと思った。
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今回、三脚「TH-650HD」とドリー「DL-2B」を実際に使用してみたが、エントリーモデルならではのシンプルな構造と使いやすさを感じた。昨今予算の削減などで活躍の場が増えてきた、小型カメラなどを運用する現場ではこのようなエントリーモデルが活躍するだろう。価格帯も非常にリーズナブルとなっているので、1つ購入してみることをお勧めする。
- 発売:2014年4月15日
- 価格:TH-650HD;¥2万6000(税別)、DL-2B;¥1万1000(税別)
- 問い合わせ先:平和精機工業 TEL 048-995-1301
- URL:http://www.libec.co.jp