ソニーHDR-AS100V 〜 大幅に進化したアクションカムの上位機種
ソニーのカメラが面白い! ここ数年、ユーザーの撮影意欲をかき立てる魅力的なビデオカメラをつぎつぎと発表している。
昨年は4K映像時代を先取りした4KハンディカムのフラッグシップモデルFDR−AX1を発表して大きな反響を呼んだ。また、収録音源にこだわったリニアPCM録音対応のミュージックビデオレコーダーHDR-MV1を新たなジャンルとして投入している。
そんな中でも特に注目を集めているものがアクションカメラである。2010年にGoProのHEROシリーズがNAB Showで出展されて以来、急成長を遂げているジャンルだ。
その特徴は通常の手持ち方式では撮影できないアクティビティ記録やスポーツにおける特殊な視点(選手や審判の視点など)からのダイナミックな撮影が可能な点だろう。
今回、大幅に進化したソニーの新アクションカム「HDR-AS100V」は、実質独壇場となっているGoPro HEROシリーズの牙城を崩すべく投入された意欲的な新機種である。いくつかの検証を行い、その使い勝手と機能についてレビューしていきたい(写真1)。
大きな機能アップがなされた撮像ディバイス
従来モデルHDR-AS30Vと比較して最も機能の向上を感じたのはカメラの心臓部である撮像ディバイスである。イメージセンサーには刷新されたExmor R CMOSセンサーが搭載され、有効画素数は1190万画素から1350万画素へと飛躍的に向上した。
また、レンズはアクションカメラに最適化された明るく鮮やかに被写体を捉える超広角(最大170°)の新開発ZEISSテッサーレンズを採用。新画像処理エンジン「BIONZ X」によりモノの質感や人物描写などが忠実かつ高精細に再現されている。
そしてアクションカメラに欠かせない「手振れ補正機能」であるが、自転車やバイク走行といった補正が一番効きにくい微小な揺れに関しても従来モデル比で約2.5倍の補正領域強化を図ることでブレを抑えた鮮明な映像撮影を実現させている(写真2)。
新記録方式「XAVC S」による超高精細な映像収録
記録方式は従来のMP4に加え、4K/HD向けに開発された「XAVC」を民生用に拡張した新方式「XAVC S」を採用している。AVCHD方式(最高28Mbps)の約2倍のビットレートをもつため、より高精細な撮影が可能だ。
フルHDの場合、MP4では60p(28Mbps)と30p(16Mbps)になるが、これに加え60p/30p/24p(50Mbps)での収録が可能になった。
実際に1920×1080(60p)で比較したところ、動きの激しいエリア(花びらや葉脈など)での映像のキレ具合(動き補償による補完による)に差が出ることが実証された。アクションが激しくなるほどこの差はより顕著になるに違いない(写真3)。
また新たに毎秒120p(1280×720)と毎秒240p(800×480)でのハイスピード撮影モード(HS)が登場。滑らかな4倍速、8倍速の超スロー再生。または音声を活かした等倍再生と超スロー再生を組み合わせた編集といった、テレビ番組やCMなどでよく見かける映像が自分でお手軽に作成することができる。ぜひ一度試してもらいたい新機能だ。
単独運用で発揮される高い機能性
従来モデルの弱点といえばズバリ、「ケース装着を前提とした運用」による機能低下であろう。筐体に三脚取り付け用のネジ穴がないため、付属ウォータープルーフケースやオプションのスケルトンフレームの装着が余儀なくされていた。
運用面でユーザーに制約がかかるのは大きなマイナスポイントであり、約92gの本機に対しケース約55gの増量はかなりの負担である。
弱点が顕著に反映される部分でいえばレンズ、その下にあるステレオマイクだ。ケース内では直接空気の振動を読み取れず、壁を隔てたような「こもった音」での収録になってしまう。また映像は余計なフィルター(ケース)を介した撮影のため、キレが失われた映像になる。
こういった弱点克服のため、本機はアクションカム3代目にしてようやく「付属物一切なしでの単体運用」が可能になった。筐体サイズの変更なく、前方底部に付属三脚アダプター(約12g)専用ネジ穴が新たに取り付けられた(写真4、5)。
ケース装着時に比べ、約43gの軽量化と正面面積約19㎟(サイコロ面1つ程度)のスリム化を実現。この改善はアクションカムの性質上、かなりポイントが高い。重量はアクション中の揺れ具合、すなわち撮影映像の安定化(ブレ抑制)に直接関与する。また小型化は装着者の目線に限りなく近いアングルで撮影できるようになるからだ。
実際に撮影した素材を比較検証したところ、同一アングルで信号波形のエッジの立ち方(画像のディテール:左側手すりの格子など)に大きな差が出た。また音声はケースの振動による接触伝導のこもったノイズがなくなりその差は歴然だ(写真6)。
その反面、風圧が直接マイクに入るようになったため、風切り音が若干気になった。しかしこの点は自作の風防(ジャマー)などで一手間加えることで改善できそうだ。
また筐体自体にIPX4相当の防滴加工を施されており、雨天時や水しぶきがかかる水辺でのアクティビティにおいて多少の水濡れ程度であればそのまま撮影が可能だ(写真7)。
さらにその軽量性や超広角アングルを活かして「○○追跡24時」のようなドキュメンタリーや「ドッキリ△△企画」などのバラエティ番組における「隠し/仕込みカメラ」での運用、トーク番組における卓上カメラなどでの運用も大きく期待されるだろう。
本体ネジ穴を巧く使って底部端子カバーを解放すればHDMI端子パススルー出力が利用可能になる。また、手ぶれ補正ON/OFF切り替えで求める撮影シーンに適した画角サイズの選択(視野角170°と120°)も可能だ(写真8)。
本来もつスペックを最大限発揮できるこの3代目こそ、待ちに待った真のアクションカメラといえるだろう。
Wi-Fi機能およびNFC接続による利便性の向上
アクションカメラはとにかく小さくなくてはならない。カメラ装着によってアクションする競技者のポテンシャルを損なってはならないからだ。そのため機能のコンパクト化・筐体の軽量化が図られ、収録確認モニターなどの付随機構を排除している機種が多い。
そして多くのアクションカメラで採用されているのがスマートデバイスを活用したWi-Fiリモコン機能によるモニタリング方式である。
本機の場合、モバイルアプリの「PlayMemories Mobile(無料)」を起動し、スマートデバイスの画面をモニター代わりにして画角サイズの確認や収録のリモート操作などを簡単に行うことができる。また、収録映像をWi-Fi経由でスマートデバイスへ転送すること可能だ(写真9)。
将来的にはスマートデバイス経由でのライブ配信にも対応していく予定らしい。アクション動画の新たな楽しみ方が今後増えていきそうだ。
さらに本機はNFC対応のAndroid搭載スマートフォンであれば認証パスワードを入力することなくかざすだけで接続ができる。現場でスマートフォンをモニターとして使用する際、パスワードの入力といった煩雑さから解放される。スタート/ゴール地点が離れているスポーツなどにおいて、どの端末からでも簡単に認証してモニタリングできるわけだ。「簡単で使いやすい」これは大きなセールスポイントだろう。
最大5台までのマルチコントロール可能なライブビューリモコン
本機を個人のアクティビティで活用したい場合、その都度スマートフォンを出して確認や操作をするのは正直面倒である。本機は手元で映像の確認や撮影のリモート操作ができる腕時計型ライブビューリモコン「RM-LVR1」を併せて発売している(RM-LVR1同梱モデルHDR-AS100VRも用意されている)。
実際にRM-LVR1を使ってみてその手軽な操作性にとにかく驚いた(写真10)。モニターは小型ながら画角調整用としては申し分なく、エクストリームスポーツを意識してグローブをつけたままでも操作できるよう、ボタン幅にもゆとりをもたせている。
これならばハイスピード撮影への切り替えなど、アクティビティの状況(ノリや思いつき)に合わせた設定変更がすぐにできるので、アイデアあふれるオモシロ映像に出会える可能性も高くなりそうだ。
さらにリモコン1台で最大5台までのカメラを同時にコントロールすることも可能だ。アクションカメラは装着者に複数(装着者視点/表情/サーフボードや自転車のスポークなどの特殊アングル)取り付けることも少なくない。複数同時の画角確認やRec/Stop操作によって撮影時の利便性が飛躍的に向上するだけでなく、アクションする装着者のポテンシャルを落とすことなく最高のパフォーマンスを撮影できるようになるに違いない。
今回使用して最も強く感じたのは、従来モデルからの各所における大幅な改善・向上である。カメラの画質は申し分なく、新記録方式による高精細映像は「小さいカメラは画が悪」という固定観念を見事に打ち砕いている。
実質独壇場となっている「GoPro HEROシリーズ」と比較しても撮影したいシチュエーションによって拮抗、もしくは凌駕するのではないだろうか。またスマートデバイスによるモニタリング環境やライブビューリモコンを使ったマルチリモート機能など、現場での使い勝手に配慮されている点が多く見受けられた。ぜひ一度手に取ってその躍動感ある映像を体感していただきたい。
価格:
・HDR-AS100V(アクションカム単体);オープン(実勢価格¥3万前後)、
・HDR-AS100VR(ライブビューリモコンRM-LVR1同梱キット);オープン(実勢価格¥4万前後)
発売:2014年3月14日
問い合わせ先:ソニーマーケティング 買い物相談窓口
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・TEL 050-3754-9555(携帯電話・PHS・一部のIP電話などフリーダイヤルが利用できない場合)
URL:http://www.sony.jp/actioncam/