横浜関内・アダプターTry & Error・第4回


アンジェニューのズームに対応するBMPCCアリバヨネットマウントアダプターの改造

 16mm用アリフレックスのアンジェニューのズームArriflex Angenieux 10×12は、フィルム撮影では定番のレンズと聞きます。職業人はお持ちの方も多いことと思います。写真1は、Blackmagic Pocket Cinema Camera(以下BMPCC)とアンジェニュー10x12です。

 デジタルでも使いたいところですが、16mmフィルムに大きさが近い1インチセンサーのBMPCCではワイド側でケラれてしまいます。ピントが近距離になるほどその傾向が強く出ます。写真2は最短撮影距離でワイド端の画です。四隅が丸くケラれております。

■マウントアダプタ改造のご依頼
 本サイトのコラム「爺の遺言〜惚れて使えばアバタもエクボ」連載中の荒木 泰晴氏からあるご相談をいただきました。その内容をまとめると以下のようになります。

・アンジェニューのズームをエクステンダーで倍率を上げ、像を広げて対応してほしい
・アリ純正の2倍エクステンダーは存在するが、とてもレア
・2倍では1インチセンサーをカバーするが、テレに寄りすぎてもったいない
・どこぞの1.4倍のエクステンダでもかけられればなぁ

 ディスカッション中、ふと思い出しました。1.2倍ほどのエクステンダーとして機能する、フランジバック調整用の補正レンズの在庫を持っていることに!(写真3)。

 純正エクステンダーは、残念ながら像が大きくはなりませんでした。エクステンダー内でケラれてしまいます。テレモアは望遠専用で、後玉が大きく出っ張るズームや広角レンズには装着できません(写真4、5)。

■BMPCC対応アンジェニューのズーム10×12マウントアダプタの試作
 補正レンズをアダプターにあてがってみてみるとうまくいきそうですが、アリバヨネットアダプタのマウント部分を3〜5mm延長しなければなりません。マウント部分の延長のスペーサーをつくるには短すぎ、延長分を足したマイクロ・フォーサーズ側マウント部品に補正レンズを固定できる物をつくれば良いわけですが、小ロットの特注品は結構なコストがかかります。しかしながら、このアリのマウントは筒状になっており、マウントアダプターは筒を抱き込む形で固定できるのでマウントから浮かした状態で留めることが可能です。延長分はアリのマウントの差し込む側にカラーをつくれば良さそうです。

 まずはマイクロ・フォーサーズ−アリバヨネットマウントアダプタを分解してレンズを仕込んでみました(写真6、7)。

 マイクロ・フォーサーズ側のマウント内にレンズが入る形です。レンズユニットにはネジが切ってあり、閉め込んだりゆるめたりすることでレンズとセンサー間の微調整が効きます(写真8)。

 アリバヨネット側は奥まで差し込まず、エクステンダーとして機能するためにブランジバックを延長した状態で固定しております(写真9)。

■補正レンズ内蔵のBMPCCでの撮影結果は
 通常の状態でケラれが一番厳しい状態の最短距離での広角側では、見事にケラレが解消しました(写真10)。補正レンズは、低倍率のエクステンダーとして機能しています。

 しかし、ズーミングしていくと焦点距離15mmのあたりで角に少々のケラレが確認できました。その辺りで像が小さくなるようです。ピント位置を最短から1.75mまでもっていくと解消されます。

 検証の映像をご覧ください。

 前半は、補正レンズ無しのアダプタでのケラれ具合です。最短撮影距離での撮影と10mほどの撮影距離の画があります。後半はピント位置は最短での撮影結果です。ワイド端では像がきてますがズーミングの途中、焦点距離15mmあたりで一旦ケラれるのが確認できます。これは補正レンズのセッティングで解消されるかもしれません。ピント位置が最短から外れればケラレは出ません。

 今回のテストでは、マウントの繰り出し量を4mmに限定し補正レンズの回転で無限遠を調整しました。絞ってあれば引きボケも気にならない程度に調整できましたが、繰り出し量と補正レンズの位置はさらに追い込んでいけそうです。また中間のケラレも解消したいところですが、今回は締め切りに間に合わせるため、記事はここまでとなります。

 なお、改造したアダプタは、mukPROのマイクロ・フォーサーズ−Arri Bマウントアダプターです(写真11)。

 アリバヨネット、またはニューアリマウントと呼ばれる16mmと35mmのアリフレックスのマウントです。アリスタンダードマウントと互換がありますが、一部のシングルヘリコイドの16mm用レンズは装着できません(写真12)。

 本記事のように、単品の改造も部品の組み合わせで容易にできることもございます。面白そうなことは是非ご相談下さい!


小菅宗信

About 小菅宗信

マウントアダプターなど撮影機材の販売サイト「muk select」と、横浜関内にて実店舗の「エムユーケイカメラサービス」を営みつつ、日々ニッチな要望に応えるべく奮闘中。

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