Avid Media Composer | Software 最新バージョン・その1:新コーデックDNxHR


 昨年12月、Avid Technologyのノンリニア編集ソフト「Media Composer|Software」の最新バージョンがリリースされた。昨年から、Avidのソフトウェアは正式名称にバージョン番号が表記されなくなったが、今回のリリースバージョンは8.3だ。

Avid Media Composer|Software

Avid Media Composer | Softwareの起動画面。昨年より、ソフトウェア名にバージョン番号が表記されなくなったが、起動画面を見るとバージョンは8.3だ。筆者としては、4K編集というビッグな新機能が搭載されながら、9.0のようなメジャーアップグレード番号が付与されていないことが気になる

 この最新バージョンでは、とうとうというか、ついに、Media Composerに4K編集機能が追加された。そこで今回から数回にわたり、4K編集機能を中心にMedia Composer|Softwareの新機能を紹介しよう。

 レビューにあたり、筆者も新しいMedia Composer|Softwareを作業用Workstationにインストールしてみた。
 今回のバージョンでは、Media Composerのインターフェースが一新(バージョン6)して以来ずっと感じていた操作レスポンスのもたつきがすっきり解消している。期待がもてそうだ。

動作要件とレビューマシーンの仕様について

 Media Composer|Software(以降、MC)は、Windows(64ビット)はOS7 Pro(SP1)またはOS8.1(Pro&Ent)、MacではOS10.8.5〜上で動作する。必要なメモリー容量は、WindowsとMac共に16Gバイト(推奨)/8Gバイト(最小)だ。経験則だが、MCは充分なメモリー容量があればより安定的に動作する。

 レビューに使用するマシーンは、Windows版がHP z820(Windows7 / CPU:2.7GHz 2プロセッサー / メモリー:48Gバイト)、Mac版がMacBook Pro 15インチ Retina(OS10.10.1 / CPU:2.6GHz / メモリー:16Gバイト)だ。

 MCの動作要件に関する詳細は、こちら(英文)で参照できる。動作検証済みマシーンは、こちら(WindowsMac)から参照できる。

 またMCは、Avid open I/Oによって、Nitris DXやMojo DXの純正BOBのほか、サードパーティ製BOBも利用可能だ。現在AJA、Blackmagic Design、Bluefish444、MatroxなどのメーカーがAvid open I/Oに対応している。サードパーティ製BOB情報は、こちらからメーカーホームページへジャンプ、そして各マシーンごとのスロット設定情報は、こちら(英文)を参照するとよいだろう。

 これらサードパーティ製BOBは、Avid 4K編集システムの構築時、予算とシステムスペックの両面で選択の幅を広げる。ユーザーにはとてもありがたい。

新コーデックDNxHR〜4K編集機能のコア技術

 DNxHRは、Avidオリジナルの新開発ビデオ圧縮コーデックである。今回、MCに搭載された4K編集機能のコアな技術だ。

 もともとAvidにはDNxHDという圧縮コーデックがある。DNxHDはHDフレーム(1920 x 1080ピクセル)に限定されたコーデックであるが、DNxHRはこのHD専用コーデックからフレームサイズ制限が取り外された拡張型コーデックといえる。その証拠に、DNxHRとDNxHDの間には下位互換関係が成立している。

 たとえばオーバーHDサイズのプロジェクトで作成したDNxHRクリップは、DNxHDコーデック支配下のHDプロジェクトにおいて、そのまま再生&編集することができる。つまり、DNxHRからDNxHDに内部トランスコードする必要はないのだ。

Avid Media Composer|Software

DNxHRにトランスコードしたクリップは、そのまま1080i HDプロジェクトに読み込める。FrameFlex機能を使えば、4Kクリップを任意にHDサイズへトリミング可能だ(右側モニターが4Kフルサイズ画像、左側モニターがトリミング後の画像)

 DNxHRコーデックには圧縮率によっていくつかのレベルがある。それを表1にまとめた。

Avid Media Composer|Software
 表1にある”DNxHR SQ”が圧縮率1/7、HDの標準コーデック”DNxHD 145″に相当する。そして”DNxHR HQ”が圧縮率1/4、HDの高画質コーデック”DNxHD 220″、”DNxHR HQX”はHQの10ビットモード、すなわち”DNxHD 220X”に相当する。”DNxHR LB”はオフラインコーデックで、HDの “DNxHD 36″に相当する。

 なお、DNxコーデックのビットレートは、編集プロジェクトの解像度とフレームレートによって異なる。表1中のビットレート表示は、解像度&フレームレートがHD24pから4KFull60pまでの間でDNxコーデックが取り得る値を示している。

 詳細は次回以降に譲るが、AMAリンクで開いたファイルベース4KクリップをDNxHR SQレベルにトランスコードし、クリップを再生してみた。

Avid Media Composer|Software

4K編集時のMedia Composer | Software デスクトップ(UHD-59.94p:3840×2160ピクセル)。MCのデスクトップには特に大きな変更が加えられていないが、前バージョンに比べ、タイムライン周りのレスポンスが大きく向上している印象だ

 DNxHR SQの画質は、前述のとおり、これはHD編集のDNxHD145に相当する。DNxHD145といえば、MCエディターにとっては「ああ、あんな感じか」と馴染み深い画質だ。

 大げさにいうと、Avid Media Composerシリーズの国内放送局への導入実績を考えた場合、現在日本国内で最もオンエアー回数の多いHD画質といえるくらいよく知られた画質だろう。

 したがってDNxHRの画質に関する云々は、ここではあまり関心が高い話題ではない。筆者が取り上げたいのは、DNxHRにトランスコードしたクリップの再生パフォーマンスだ。

 トランスコードした4Kクリップのソースモニターへのロード、再生、停止、イン点のマーク、シーケンスへの編集など、タイムライン周りの操作レスポンスがとても良い。HDクリップと比べても、まったく遜色ない編集パフォーマンスが実現されている。

 実のところ、筆者は今回のレビューを行う前、「4K編集では、低画質によるオフライン編集が必要になるかも?」と憂慮していた。だが、それは杞憂に過ぎなかったようだ。この編集パフォーマンスなら、最初から問題なくオンライン画質(DNxHR SQあるいはHQ)のクリップを使った4K編集が行えるだろう。悪夢は繰り返されない。

 ただし若干補足すれば、トランスコード済み4Kクリップの操作レスポンスは、クリップを保存するメディアドライブの読み出し速度に依存するようだ。

 定性的な説明で申しわけないが、SSDとSATA-HDDに保存したトランスコード済み4Kクリップの操作レスポンスを比較すると、やはりSATA上のクリップのほうは若干操作に引っかかりが感じられた。快適な編集環境には、メディア用ドライブにSSDや高速化されたRAID-HDDを選択するとよいだろう。

 なお、CPUパフォーマンスモニターを開きながら編集作業を行ってみたところ、編集作業中のCPU使用率は、単純なカット編集の場合だいたい10〜20%程度を上下していた。

Avid Media Composer|Software

複数のフォーマットクリップが混在するシーケンスを再生したところ、CPU使用率は10%程度で推移した(使用マシーン:HP z820/2.7GHz 2プロセッサー/メモリー48Gバイト)

 4Kカメラの普及により、筆者の周りでも4K収録素材が編集現場に持ち込まれることが増えている。

 これまでは、4K-HD変換に四苦八苦することも少なくなかったが、今回のDNxHRコーデックによって、4K素材が簡単にHD編集に使えるようになった。筆者にはこれだけでも大変ありがたい。

 次回は新しくなったプロジェクト作成機能、ファイルベースクリップのトランスコードを紹介しながら、MCの操作環境を紹介しよう。

発売:2014年12月22日
価格http://www.avid.com/JP/products/Media-Composer#licensing
・Media Composer|Software サブスクリプション年単位:¥7万300(税別)〜
・Media Composer|Software 永続ライセンス:¥15万2000(税別)〜
・Media Composer|Software フローティングライセンス:販売代理店に問い合わせ

 Media Composer|Softwareの価格は、サブスクリプション(月契約/年契約)、永続ライセンス、フローティングライセンス(大規模施設向け複数パッケージ)の3種類が上記のように設定されている。
 永続ライセンスでは1年間のサポート契約が含まれており、1年間のサポートとソフトウェアアップグレードをが提供される(2年目以降のアップグレードおよびサポートは、別途¥3万(税別)にて購入)。
 サブスクリプションライセンスは、ライセンス有効期間の間、サポートおよびアップグレードが提供される。

URLhttp://www.avid.com/US/products/Media-Composer#features

Media Composer|Software 30日間トライアル ダウンロードURLhttp://apps.avid.com/media-composer-trial/JP/


関連記事

同カテゴリーの最新記事