キヤノンが、新4Kカメラ2機種を含め、4Kラインナップを拡充〜カメラ本体での4K記録に新ビデオフォーマットXF-AVC
キヤノンは、4月8日、4Kラインナップを拡充する新製品として、コンパクト4Kビデオカメラ「XC10」、EOS C300の後継機種「EOS C300 Mark II」、24型4Kディスプレー「DP-V2410」の3機種、および業務用の新ビデオファーマット「XF-AVC」を発表した。
また、既存のDP-V3010についても、HDR(ハイダイナミックレンジ)表示などの新機能を追加するファームウェアが発表され、11月より無償提供されることが明らかとなった。
これらの新製品および新機能は、米国ラスベガスで4月13〜16日に開催される2015 NAB Showにおいて、展示される予定となっている。
新しい4KカメラとなるXC10とEOS C300 Mark IIは、XF-AVCフォーマットとCFast 2.0カードの採用により、カメラ本体での4K記録を実現している。
新製品の価格と発売時期は下記のとおり。
・コンパクト4KビデオカメラXC10
価格;オープン(市場予想価格¥22万前後) 発売;2015年6月中旬
※サンディスクのCFast 2.0カードとCFast 2.0カードリーダー/ライターを同梱したメモリーカードキットも発売予定
・4KデジタルシネマカメラEOS C300 Mark II(EFマウント)
価格;オープン(市場予想価格¥180万前後) 発売;2015年9月上旬
・業務用24型4KリファレンスディスプレーDP-V2410
価格;オープン 発売;2015年10月
キヤノンが、CINEMA EOS SYSTEMを展開し始め、EOS C300を発売(2012年1月発売)してから約3年。4Kカメラに関しても、EOS C500(2012年10月発売)やEOS-1D C(2012年12月発売)が登場してから2年半ほどが経過している。この期間に4Kを取り巻く環境も大きく変化した。
キヤノンでは、同社の4K製品に求められるさまざまな要望、“カメラ本体での4K記録”、“手軽な4Kカメラ”、“4Kフォーカシングのアシスト機能”、“Canon Logの改善”、“多様な撮影現場に対応する4Kディスプレー”などに応える新製品3機種を開発。
その中でも特に要望が多かったという、“カメラ本体での4K記録”を実現させたのが、キヤノンが開発した新ビデオファーマット「XF-AVC」である。
業務用ビデオフォーマットXF-AVC
XF-AVCは、圧縮フォーマットとしてMPEG4 AVC/H.264を採用し、解像度、ビットレート、カラーサンプルなどの組み合わせによって、4Kおよび2K/HDの記録に対応する。ファイルフォーマットはMXFとなる。
XC10とEOS C300 Mark IIへの搭載が発表されているXF-AVCであるが、フォーマットやビットレートなどの組み合わせがカメラごとに設定されており、使用できる範囲(記録できるフォーマット)は異なってくるので注意が必要だ。
またXF-AVCは、下記のさまざまな映像制作関連メーカーとの協業が進められている(対応時期はそれぞれ異なる)。
・Adobe Systems
・Apple(Final Cut Pro X)
・Assimilate
・Autodesk
・Avid Technology
・Blackmagic Design
・Codex
・Colorfront
・FilmLight
・Grass Valley
・IN2CORE
・Pomfort GmbH
・Quantel
・SGO
コンパクト4KビデオカメラXC10
XC10は、デジタルビデオカメラの新シリーズとして位置づけられ、本機のみで4K動画記録と約1200万画素の静止画撮影が可能な小型軽量の業務用4Kビデオカメラとなる。
また、Canon Log(8ビット)とワイドDRガンマも搭載しており、CINEMA EOS SYSTEMのサブカメラとして機動力を必要とする場面で活用することも可能だ。
XC10の外観は、デジタルスチルカメラに酷似するコンパクトなボディであるが、業務用として求められる性能・機能を有しており、特に高品位な4K動画記録を実現するために、レンズ、センサー、映像処理プラットフォームを一新。27.3-273mmの光学10倍ズーム固定レンズと、高感度1.0型CMOSセンサー、映像処理プラットフォームDIGIC DV5のすべてを新開発している。
記録ビデオフォーマットは、前述のとおりXF-AVCを採用。記録メディアには、4K記録時はCFast 2.0カード、HD(および静止画)記録時はSDメモリーカードを使用する。カードスロットは各1スロットを装備。
音声記録に関しては、ステレオマイクを内蔵するほか、マイク入力(3.5mmステレオミニジャック)を装備。リニアPCM(16ビット/48kHz)2chでの記録となる。
外形寸法は幅約125×高さ102×奥行122mm、質量は約930g(本体のみ)となっており、小型軽量ボディを活かした撮影が可能。さらに、ティルト式液晶と縦に前後約90°回転可能なグリップを採用しており、操作性を高めている。
URL:http://cweb.canon.jp/prodv/lineup/xc10/index.html(製品情報)
4KデジタルシネマカメラEOS C300 Mark II(EFマウント)
EOS C300 Mark IIは、2012年1月に発売されたEOS C300の後継機に位置づけられる4Kデジタルシネマカメラ。同機は4Kのカメラ本体記録に対応した点が大きな特長となっているが、それだけでなく、新開発のセンサーや映像処理プラットフォームを搭載するなど、基本性能を刷新したことで大幅な進化を遂げている。
外観も一見した印象は変わらないが、操作性・拡張性・堅牢性を向上させたことで、外形寸法も若干大きくなり、質量も増えている。
イメージセンサーには、有効画素数約885万画素のスーパー35mm相当サイズCMOSセンサー、映像処理プラットフォームにはデュアルDIGIC DV5を採用。共に新開発されており、映像処理プラットフォームは従来機種のEOS C300と比較して二世代新しく、さらにデュアルとなっている。
記録ビデオフォーマットはXF-AVCを採用。記録メディアには、CFast 2.0カード×2スロット、SDメモリーカード×1スロットを備え、CFast 2.0カードでは4K/2K/HD記録、SDメモリーカードでもHD記録が可能となっている(従来機種のEOS C300にもSDメモリーカードスロットが装備されているが、静止画やカメラ設定などを記録する用途でしか使用できなかった)。
EOS C300 Mark IIでは、この3スロットによる同時記録を可能としており、CFast 2.0カード2枚へ4K同時記録を行いながら、さらに同時にSDメモリーカードへHD記録することも実現できる。
またEOS C300 Mark IIは、EOS C500と同様の4K RAWデータ出力(29.97pまで)が、カメラ本体記録と同時に可能。3G-SDI出力を介して対応する外部レコーダーでRAW記録でき、EOS C500と同様のワークフローを組むことができる。
色域は、ITU-R BT.709とDCI-P3はもちろん、4K放送規格であるITU-R BT.2020、キヤノン独自のCinema Gamutも選択可能。
Canon Logに関しては、EOS C500と同様に10ビット/12ビットを採用したほか、新しいガンマカーブを採用したCanon Log2を搭載。
このCanon Log2は、従来のCanon Logと比べてダイナミックレンジを広げるとともに、明部の階調の割り当てを減らし、暗部の階調の割り当てを増やすことで、Log空間の広い領域で均等な出力が得られるようになっている。
Canon Log2を選択したときのダイナミックレンジはISO100〜800選択時に200〜1600%と変化し、ベース感度のISO800で1600%(15ストップ相当)を実現している。
URL:http://cweb.canon.jp/cinema-eos/lineup/digitalcamera/c300mk2/index.html(製品情報)
業務用24型4KリファレンスディスプレーDP-V2410
DP-V2410は、多様な撮影現場に対応する24型の小型軽量4Kリファレンスディスプレー。既存製品のDP-V3010と比較して、面積比で約67%、質量比で約50%(24kg→12kg)を達成している。
また、単なる小型軽量というだけでなく、キャリングハンドルやスタンド、前面操作ボタンを備え、可搬性や操作性を高めている。DV24V電源にも対応。
忠実は色の再現性は、DP-V3010から継承しており、放送規格ITU-R BT.709やEBU、SMPTE-C、デジタルシネマ規格DCI-P3はもちろん、次世代放送規格のITU-R BT.2020に対応。さらに、AMPASが提唱するカラーマネジメント規格ACESの伝送規格ACESproxy(ACES System Ver.1.0)にも対応する。
また、Canon Log/Canon Log2のほか、SMPTEが提唱する広いダイナミックレンジをもったST2084信号に対応し、HDR映像のモニタリングが可能。通常の映像では黒つぶれや白飛びしてしまう暗部、明部もディテールのある表示を実現する。
そのほか、CINEMA EOS SYSTEMとの連携も強化されており、EOS C300 Mark IIやEOS C500と3G-SDIケーブルで直接接続し、4K Cinema RAW映像をモニタリング可能。ディスプレーにディベイヤー機能を内蔵することで、従来DP‐V3010で必要だった外部ディベイヤー機器が不要となっている。カメラとの接続は、30p以下の場合3G-SDI×1本、50pや60pでは3G-SDI×2本となる。
URL:http://cweb.canon.jp/v-display/lineup/dp-v2410/index.html(製品情報)
DP-V3010が最新ファームウェアにより機能拡張
業務用30型4KリファレンスディスプレーDP-V3010に、HDR表示などの各種機能を追加するファームウェアが、2015年11月より無償提供される。
基本的には、DP-V2410に搭載された新機能が、DP-V3010にも反映される形で、Canon Log2やST2084信号に対応して、HDR映像のモニタリングが可能になるほか、ACESproxyにも対応。
そのほかにも、下記ような映像制作の作業効率を向上させる各種機能の追加や性能向上が予定されている。
・ピクチャーモードごとに、複数のLUT、ASC CDLが使用可能
・OSD(On Screen Display)表示サイズの選択機能を追加
・映像表示の切り替え速度を向上
・そのほか、各種操作性を改善
URL:http://cweb.canon.jp/v-display/lineup/dp-v3010/firmware.html(製品情報)
問い合わせ先:
・XC10;キヤノンお客様相談センター TEL 050-555-90004
・EOS C300 Mark II、DP-V2410;キヤノンお客様相談センター TEL 050-555-90006
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