さくら映機が、4K HDRリアルタイム編集システム「4K Prunus」を発表


 さくら映機は、12月14日、東京都中央区銀座の銀座フェニックスプラザにおいて、4K HDRリアルタイム編集システム「4K Prunus」の記者発表会を開催した。

4K HDRリアルタイム編集システム「4K Prunus」

 4K Prunusは、これまでも参考出品としてさまざま機材展で展示されていたが、製品化にあたりソフトウェアとハードウェアを一から見直して、HD編集と同等の操作性とワークフローを実現している。

 また、新規に自社開発した12G-SDI入出力ボード(SKR-12GIO/EXP3)によって、XAVC 4Kへのネイティブ対応と、色情報変換(HDR処理)の演算が可能となり、
・4K60p HDR 2ストリーム+テロップのリアルタイム再生とモニタリング
・4K60p HDR XAVCファイルの実時間での書き出し
を実現。4K編集で課題とされている放送品質でのモニタリングや書き出し時間などの事象を解決している。

 ラインナップとしては4K/2Kモデルと4Kモデルを用意。12G-SDI入出力ボードに加えて、HD-SDI入出力ボードを搭載しているか否かが両モデルの違いとなっている。発売は2018年3月下旬、受注は発表会当日の12月14日より開始されている。
 また、従来の2Kモデル(HDモデル)である「Prunus」と「PrunusNote」も4K Prunusの発売に合わせて価格が改定される。

・4K Prunus(4K/2Kモデル):¥600万/税別
・4K Prunus(4Kモデル):¥500万/税別
・Prunus(HDモデル):¥275万/税別
・PrunusNote(HDモデル):¥79万5000/税別

 発表会冒頭の挨拶で、吉田智晃 代表取締役は、これまでの取り組みやノンリニア編集機を開発するにあたって目指していることに触れ、4K Prunusについては「開発にあたって、2ストリームビデオに簡単なワイプやディゾルブ、テロップを入れる基本的な4K編集が、リアルタイムに再生とモニタリングできて、リアルタイムに出力できることを目指し、それが完成しました」とアピール。

吉田智晃 代表取締役が発表会の冒頭で挨拶し、DVノンリニアから始まった編集機開発のこれまでの取り組みや4K Prunusへの思いを語った

 当日のデモでは、4K HDR番組制作のワークフローを想定して、事前収録したロケ素材(XAVC 4K60p S-Log3)を主に使用して、リアルタイム編集・書き出し、各種機能が披露された。

4K60p HDRのリアルタイム編集とリアルタイム(実時間)書き出し

 4K Prunusでは、独自のファイルアクセス機能により、編集用に中間コーデックへの変換を必要とせず、システム(PC)に接続した収録メディアをダイレクトに編集することができる。編集後に使用範囲のみをPCに取り込んだり、編集作業を行いながらバックグラウンドで素材をコピーすることもできる。

本体マシーンには、DELLのワークステーションPrecision T7920を採用

 新規開発の12G-SDI入出力ボードは、入力1系統と出力2系統を装備しているほか、外部同期1系統とボード間の同期インターフェースも搭載している。

 また、FPGAベースで設計されたXAVCエンコード機能と色情報変換機能を実装。XAVCファイルやLogのリアルタイム処理を実現している。専用ICチップを使用しておらず、回路の書き換えができるので、将来的に新しい圧縮フォーマットやLogへ対応することも可能である。

新規開発の12G-SDI入出力ボード(型番:SKR-12GIO/EXP3)

 HDRへの対応に関しては、どれだけ簡単に作業できるかが考えられており、エディターが特に意識することなく編集できるように開発が行われている。

 具体的には、プロジェクトを作成する段階で“色域・ガンマ”を選択することにより、編集中にタイムラインに配置されたLog素材は、自動的に計算されて選択した色情報(HLGやPQ、S-Logのままなど)へ瞬時に変換され、リアルタイム再生や12G-SDI出力でマスターモニターでの確認、ファイル出力も可能となっている。

XAVC 4K60p S-Log3の2ストリームを、HLGへの色情報変換を行いながらリアルタイム再生・モニタリング

 4K Prunusでは、素材のMXF情報を読み取り、その色域やガンマを自動認識するので、編集素材に異なるLogやBT.709が混在しても、間違いなく計算され、選択した色情報が反映されるという。
 また、カラーコレクション機能も搭載されているので、編集作業での色調整も、もちろん可能となっている。

 テロップに関しても、4K Prunusが10ビットに対応していることで、HDR領域がサポートされている。テロップは、1テロップ1ストリームという考え方ではなく、その面積比で計算されるので、2ストリームビデオに対してサイドスーパーのような小さなテロップであれば複数挿入してもリアルタイム性を保つことができる。

4K Prunusの接続図。ネットワークを介した他社テロップシステムとの連携も考えられている

部分差し替えや追っかけ編集も

 書き出した完プロのファイルに対して修正部分のみの差し替えが可能な“部分差し替え編集機能”や、サーバーレスで収録(デジタイズ)しながら平行して編集やレンダリング出力の処理が行える“追っかけ編集”機能も搭載し、完パケ後の手直し作業や、中継・ダイジェスト編集も効率的に行うことが可能となっている。

 追っかけ編集では、12G-SDI入出力ボードの入力と出力が非同期で動作するので、収録中のSDI出力の状態を、収録中の映像・編集素材・タイムラインの映像から切り替えてモニターで確認することができる。
 また運用方法としては、ネットワークを介したEVSシステムとの連携も実現している。

 ユニークな機能としては、クレジットを入れる段階で便利な“完プロフォーマットの追加”を搭載。クレジットとカラーバーのシーケンスが追加できるもので、設定画面でクレジットの内容を記入することができる。

“完プロフォーマットの追加”機能。設定画面に記入した内容がクレジットに反映される

 発表会では、4K Prunusの拡張として8K Prunusへの可能性にも言及。4K Prunusの設計段階から8K Prunusも視野に入れており、近い将来に実現できると明言。8K422 60p HDR 2ストリーム+テロップのリアルタイム編集が可能になることをアピールした。

 また、4K Prunusによる4K HDRとHD SDRのサイマル制作への対応も開発が進んでおり、3月下旬の発売時点での実装が目指されているという。

問い合わせ先
さくら映機 TS部TEL03-6427-3971、FAX03-6427-3972
URLhttp://www.sakuraeiki.co.jp


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