Premiere Pro で遊ぼう!〜効率を忘れた先に見える可能性・第3回
第3回 蝋燭の炎をつくる
みなさんこんにちは。
Premiere Proをとことん遊び倒す連載、今回は「蝋燭の炎をつくる」です。
本連載担当の編集者さんへのメールに、ふと思いついて書いたところ、ぜひそれで!となってしまい、できんのかコレと思いつつ、チクタク試作を重ねてみまして、なんとなくまとまったので、記事にしたいと思います。
蝋燭の炎、通常ですと、AEや3D CGソフトを使い、パーティクルを発生させてなんとかするわけでしょうが、Premiereにそんな機能があるはずもなく、テロップ機能とエフェクトだけでなんとかしてみようと思います。ひとまず、仕上がりご覧ください。短くてスミマセン(レンダリング重い…)。
ムービー1 ひとまず、仕上がりご覧ください
レシピと使用エフェクト
■炎素材を調達
ともかく、炎の「形」をつくらなければはじまりません。といっても、Premiere、自由に形を描ける機能はタイトル作成ツール「Adobe TITLE Designer」だけですので、なんとかこの機能を使って乗り切りたいと思います。Photoshopなど使えばもっと高品質にできると思いますが、一応「Premiereの外には出ない」縛りですので。
■炎素材を揺らす
蝋燭の炎は、ゆらゆらしていますので、ディストーション系のエフェクトを、複数使います。ゆらゆらそのものは、「波形ワープ」(ディストーションフォルダ)そして、味付けに「タービュレントディスプレイス」(ディストーションフォルダ)を若干使います。
■炎をまたたかせる
炎は、チロチロまたたいていますので、これには、「ストロボ」(スタイライズフォルダ)を使用。
■フレアをつくる
炎のまわりに、ぽおっとフレアが欲しかったので、それをつくります。これにはいろんな考え方ができると思いますが、今回は「照明効果」(色調補正フォルダ)をカラーマットに適用して炎の後ろに合成しました。「照明効果」は、炎の中に明暗をつくるなど、他にも何ケ所かで使っています。
つくってみよう
■炎をつくる
まずは、炎の形をタイトルツールを使ってつくります。が…つくり始める前に、ろうそくの炎って実際どうなってるんだ?ということで、実物を観察します。
炎の根本のところは、青いですね。 芯のまわりは透明? 黄色の炎は、芯の先端部あたりが一番太く、上にしたがって細くなり、先っぽは透明になってフェードアウトしている印象です。写真ではあまりよくわかりませんが、炎の色は、芯の先端部の一番太いところが最も明るように見えます。
ということで、パーツは、3種類つくることにしました。
A:炎の根本の青い部分のパーツ
B:黄色の炎を形つくる、雫型のパーツ(半透明にする)
C:炎の色の明るい部分をつくるためパーツ
これらは、それぞれ、ブラーをかけて境界をなじませたいので別々のテロップとして作成します。Premiereのタイトルツールは、図形の境界をなじませる(ぼかす)機能に乏しいので、別々にして、ブラーでなじませながら、タイムライン上で重ねあわせたほうがしっくり行くと思います。
では、いざ、炎のパーツをつくっていきます。
まずは、Aの青い部分。まず、青に塗りつぶした四角形を描いて、それを「図形」パラメータで「塗りつぶしたベジェ」に変換します。こうすると四角形の頂点をペンツールで編集したり、頂点を足したり引いたりしながら形状を変えることができるようになります。「アンカーポイントの切り替えツール」ツールを使って、頂点をベジェに変更すると、ハンドルをグリグリ動かして曲線も描けるようになります。図形の下をグラデーションで透明になるようにしました。
次は、Bの炎の外枠になるパーツ。これも考え方は同じで、今度は円形を描いて、ベジェに変換して作業を行いました。
最後に、Cの炎の濃い部分をつくるパーツ。これも同じ考え方で円形からベジェに変換して作業します。
このテロップは、炎のハイライト部分担当なので、真ん中あたりが一番あかるく、周囲に行くに従って暗くなっていくようにしたい。「塗り」の種類を「円形グラデーション」にして塗ってみたのですが、グラデの中心位置をコントロールできないのでいまひとつです。そこで、「照明効果」を「全指向性」モードで適用して、中心の少し上あたりを明るく照らすようにしてみました。このテロップ+照明効果は、割と仕事でも使います。テロップにちょっと高級感を足したいときなんかにいいですね。
これをタイムラインに配置します。
一番下に、Aの青い部分のパーツ。合成モードは「通常」。
二番目に、Cの炎の明るい部分のパーツ。合成モードは「通常」。
一番上に、Bの炎全体のパーツ。描画モードは「スクリーン」で、不透明度もいじって半透明にしてあります。
そして、それぞれを「ブラー(ガウス)」で適宜ぼかします。
ただ、デフォルトのままでは、全体がぼうっとしてしまいます。炎の輪郭はある程度くっきりさせておきたいので、ぼかしの方向を「縦」にして炎の縦方向の輪郭にあまり影響が出ないようにしました。
■炎をゆらす
この炎にゆらぎを与えていきます。それぞれに、ゆらゆらさせる手もあると思いますが、パーツにはわかれてはいるものの、もともとは一体化した「炎」ですから、動きはシンクロしているはずだな、と。
なので、エフェクトは、調整レイヤーを使って、3つのトラックに同時に適用することにします。調整レイヤーをつくったら、一番上のトラックに配置して、そこに、「ゆらぎ」を加えるエフェクトを適用していきます。
大きな問題は「ゆらぎ」のつくり方です。最初は、ランダムなゆらぎを与えればいいんだな、と思い込み、乱流をつくり出すエフェクト「タービュレントディスプレイス」で色々ためしていたんですが、どうも、このランダムさが逆に人工的というか、わざとらしい感じにみえてしまいました。
考えてみれば、炎のゆらぎは、炎自身の温度がつくりだした「気流」によってゆらいでいて、その気流は、下から上にすーっと(多分)等速で流れています。
なので、ある程度の規則性というか、繰り返し感のほうがしっくり来るのかも…。ということで、規則的な波をつくり出す「波形ワープ」を複数適用してみることにしました。このエフェクトは、設定した波形の形を使って、画面を波状に歪ませます。
波形をありふれた波型「サイン波」に設定して実験していきます。まずは、縦方向、横方向、を同時に適用してみます。やはり、格子状のパターンが見えてしまって、今ひとつです。でもニュアンスは炎っぽくなりそうな予感が…。
次に、これに加えて、45°に傾けたものを適用します。少し格子状のニュアンスが和らいだので、調子に乗って逆45度に傾けたものも適用。
「波形ワープ」を都合4個適用して、結果、規則性がありながら、タービュレントディスプレイスのような「面で歪む」ニュアンスも見えてきた感じです。
最後の仕上げとして、ほんのすこしだけランダムなゆがみを、今度はタービュレントディスプレイスで加えて「ゆらぎ」の完成としました。
下の図は、今回の4つの「波形ワープ」を順々に適用していったもの。実際には微妙な歪みなので、わかりやすく波高を高く設定してあります。
なんとなくいい感じなのですが、炎の先っぽが気になってきました。先端がくっきりしすぎています。ここは若干フェードアウト気味な感じにしたい。
という事で、「クロップ」を適用して、炎の先端部分をクロップし、若干エッジをぼかすようにしました。このクロップされた部分もゆらゆらしていないといけないので、「クロップ」エフェクトは「波形ワープ」の上に移動させて、一番最初に計算させるようにします。
■炎をまたたかせる
ただ、このままでは、ゆるゆる動くだけで、まだ「炎感」が足りません。これはまたたいていないせいです。蝋燭の炎は、ちろちろとまたたきます。そこで、前回の8ミリフィルムでも大活躍した「ストロボ」を使います。
炎の下の青い部分にはまたたきはいらないので、これ以外の炎のパーツにストロボを適用します。
ストロボを、アルファチャンネルで出力するようにして、こまかく、定期的に、全体が暗くなったり、元に戻ったりするように設定します。
これで炎部分が完成です。一度レンダリングしてみましょう。
ムービー2 これで炎部分が完成です。一度レンダリングしてみましょう■ろうそくの芯をつくる
炎ができたので、これに加えて、「芯」の部分もつくって合成します。これもタイトルツールでつくります。白い芯をつくり、その上に、黒がフェードインするような図形をかさね、最後に、赤い先端部を乗せます。
この芯を炎の下のトラックに置いてに合成しますが、ここで一度、炎をつくりこんだシーケンスをネストします。そのままでは、調整レイヤーのエフェクトが背景にまで及んでしまうからです。そして、ネストした炎の下のトラックに芯を配置します。
ここでも、先端の赤い部分から芯のねもとにむかってだんだん暗くなるように「照明効果」を適用しました。
■フレアをつくる
この炎を、カメラで撮影したのだとすると、フレアもあると「空気感」が出そうです。炎の周りに、ふわっとした光のフレアをつくりましょう。
ベージュ色のカラーマットを用意して、一番下のトラックに配置します。そのうえで、このカラーマットに「照明効果」を適用します。
「照明効果」には、ライトのモード(種類)がいくつか選べるようになっていますが、この中から「全指向性」を選択します。このモードは、ちょうど懐中電灯を正面から見たようなライトで、中心から周囲に向かってぼうっと照らしてくれます。位置を炎の中心に持ってきて、範囲を炎の上下ぎりぎりぐらいに調整しました。環境光のパラメータはちょっと暗めに設定するとフレア風になります。
フレアは、炎の光に由来するので、同じように瞬いていなければなりません。炎に適用した「ストロボ」をまんまコピペしてチラチラさせます。
これにて完成です。ゆらし系のエフェクトはやはり、複数使うと自然な動きになりますね。
今回面白かったのは、いっぺんに複雑な歪みをつくり出す「タービュレントディスプレイス」があまり使えなかったというとろこです。自然界の「ゆらゆら」は、意外に、一個一個は単純な歪みが折り重なるようにして出来ているのではないのかなぁ、という感じがしました。
さて、先ほど、「波形ワープ」を重ねる効果をお見せするために、わざと歪みの適用量を増やした画像を掲載しましたが、それがちょっとおもしろかったので、色をいじって妖しいファンタジーアニメ風蝋燭の炎をレンダリングしました。
一度、方法論が出来上がると、パラメータの設定しだいで色々バリエーションがつくれて楽しいですね。
ムービー3 一度、方法論が出来上がると、パラメータの設定しだいで色々バリエーションがつくれて楽しいですね
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