不動前TACTICS reboot・第3回:Premiere Pro CC 2014の新機能
Adobe Creative Cloudのメジャーアップデートが盛大に発表されたのが、2014年6月(CC 2014)。それから半年も経たないIBC2014では、ビデオ製品のマイナーアップデートが発表されている。
今回は、Premiere Pro CC 2014の最新機能をご紹介したい。
マスク&トラックの進化
Premiere Pro CC 2014年リリースから導入された目玉機能「マスク&トラック」。領域を限定したエフェクトの追加が簡単となり、しかも動きのある対象物をトラッキング(自動追尾)できる便利機能だ(図1、2)。この機能が2014年10月のアップデートで、さらに力強く進化した。
たとえば、画面の人物だけを明るくし、外側の輝度を落とすエフェクトをかけてみよう。
エフェクトでルミナンスカーブを選択。そしてエフェクトコントロールパネルをチェック。従来からある楕円と四角のマスクに加えてベジェ曲線でのマスクが作成できるようになっている。
PhotoshopやAfter Effectsの要領でマスクをつくっていくことができるので、自由度が格段に向上。
また、マスク境界の拡大縮小やぼかしが、プログラムモニター内で直接調整できるようになった(図3)。微妙なマスキングも実に直感的に作業が進む。
マスクを作成したら、エフェクトコントロールパネルの再生ボタンでトラッキングスタート! 映像を自動解析し、動く被写体を追いかけキーフレームが自動で打たれていく(図4、5)。逆再生方向にトラッキングすることも可能だ。
マスクは複数作成してもOKで、楕円や四角と混在しても問題ないので、作業は自由自在だ(図6)。
RAW対応拡大&GPUデベイヤー強化
REDやARRI ALEXA、キヤノンEOS C500など、高解像度記録に対応するデジタルシネマカメラの多くでは、赤/青/緑の各センサー出力を現像せずに記録するRAW形式が採用されている(図7)。
Premiere Proでは、CS4のRED対応を皮切りに、ARRI、Cinema DNG、Phantom、ソニーと、主要なRAWフォーマットはすべてネイティブ対応してきた。ここでいうネイティブ対応とは、素材を変換することなく「そのまま」そのままソフトウェアに読み込んで編集できるということだ。
CC 2014では、新たにAJAから発売となったCIONのRAW形式にもネイティブ対応(写真1)。このフットワークの軽さは、Adobeビデオ製品が多くのユーザーから支持される大きな理由だろう。
また、RAWファイルを扱う際の再生機能も強化された。赤/青/緑のセンサー出力を調整して実際の映像に変換する処理は「デベイヤー」と呼ばれ、4K映像など画素数が多ければ多いほどパソコンへの負荷が大きなものとなってくる。
Premiere Proでは、Mac Pro(Late2013)に搭載されているFire ProやNVIDIA CUDA対応のビデオボード(GPU)を活用してデベイヤー(=現像処理)を高速に処理。再生を強力にアシストしてくれる。
これまでのRED RAW、Blackmagick Cinema CameraのCinema DNGだけでなく、新たにAJA RAW 、Canon RAW、Phantom CineのGPUデベイヤーにも対応。たとえば、REDの4K素材(4096×2304、23.976fps)をフル解像度でスムーズに再生できる(パソコンのGPUはNVIDIA Quadro4000)。
また、Mac Book Pro(LATE2012)でPhantom Cineの素材をフル解像度で再生できてしまう(図8、9)。
特別なエフェクトのように目に見える機能ではないが、編集環境をぐっと快適にしてくれる機能であることは間違いない。
検索機能大幅強化
素材の検索機能が大幅に強化された。プロジェクトパネルに用意された「クエリーから新しい検索ビンを作成」をクリックすると(図10)、新たに「検索ビンを編集」というウィンドウが立ち上がる。ショット、シーン、ビデオコーデック、フィールドオーダー、その他さまざまなメタデータで素材を検索することが可能だ(図11)。
たとえば、ビデオコーデックを選択し、REDで検索してみよう。プロジェクトパネルで「ビデオコーデック:RED」という新しいビンが作成され、その中に該当するREDのR3Dファイルが集まるという仕組みだ(図12、13)。
この検索ビン機能は、新しい素材がプロジェクトに追加されるたびにアップデートされるので、実に便利だ。
また、タイムライン上での検索機能も使い勝手が良い。任意のタイムラインをアクティブにして、「編集」から「検索」と進む。すると新たに「タイムラインで検索」というウィンドウが立ち上がる。ここでも、さまざまなメタデータでタイムライン上のクリップを検索できる(図14)。
たとえば、ビデオコーデックを選択し、ProResで検索! すると、該当するクリップの先頭にインジケーターが移動する(図15)。「タイムラインで検索」ウィンドウで「すべてを検出」をクリックすれば、タイムライン上の条件に当てはまる、すべてのクリップが選択される。
検索ビンおよびタイムライン検索、この2つの機能によって編集時のストレスが大きく減ることだろう。
XAVC CBG対応
Adobeのビデオ製品は、最新のフォーマットを常に意識し、進化を遂げている。4Kに対応するソニーのXAVCコーデックにも、2013年のアップデートで読み込みと書き出しに対応。そして2014年10月のアップデートでは、これまで対応してきたVBR、可変ビットレートに加えて、新たに放送規格に準拠したCBG、固定バイトGOPでの出力に対応した(図16)。
Premiere Pro CCのシーケンスから、実際に放送規格に準拠したCBGのXAVC形式で書き出す手順を見てみよう。
任意のシーケンスを選択し、「ファイル」から「書き出し」と進む。Media Encoder CCが立ち上がったら、画面の一番上にある書き出し設定の「形式」で「MXF OP1a」を選択する。
つぎに「ビデオコーデック」。XAVCコーデックがフルHD(1920×1080)からDCI4K(4096×2160)の解像度で用意されていることがわかる。ここでは国内の4K放送で採用されている解像度3840×2160で、Class300を選択。
そして「フレームレート」。23.976から59.94が用意されているが、放送規格は59.94。
最後に画面下位置にある「詳細なMXF設定」。ここで「CBG」を選択する。オーディオの設定は、8チャンネル、24-bitを選択。自分のパソコンで、最新の4K放送対応のファイルを出力できるのは、Creative Cloud製品の大きなアドバンテージといえる。
GoPro Cineformコーデック対応
GoPro Cineformコーデックは、WindowsとMacのマルチプラットフォーム対応で、4K以上の高解像度にも対応した次世代中間コーデックとしても期待される注目のファイル形式。Premiere Pro CCは、その読み込みと書き出しに対応した(図17)。
本稿執筆時、まだ筆者の手元にGoPro Cineformの撮影素材がなかったのだが、試しにPremiere Pro CCのシーケンスをGoPro Cineformで書き出してみた。
Media Encoder CCを立ち上げて「形式」でMac環境ならQuickTimeを選択(WindowsならAVI)。ビデオコーデックにGoPro Cineformという選択肢が用意されているのがわかるだろう。プリセットでアルファチャンネルの有無を選択することができる(図18)。
注目すべき点としては、GoPro CineFormが圧縮形式にREDと同じくWaveletを採用しているところ。すなわち、Premiere Pro CCなら再生時の解像度を選択することで、パソコンのスペックに応じてスムーズな再生が得られることだろう。
コンソリデート&トランスフォーム
プロジェクトに大量の素材を読み込んで、編集作業に入ったとする。編集作業を進めた結果、「タイムラインで使わなかった素材が結構存在した」ということはよくある話だ。
プロジェクトをスリムにしたいが、不必要な素材をわざわざ選別するのも手がかかる。そんなときに役立つのが、このコンソリデート&トランスフォーム機能。
任意のシーケンスを選択し、「ファイル」から「プロジェクトマネージャー」と進む。「プロジェクトマネージャー」という別ウィンドウが立ち上がるので、そこで必要な項目にチェックを入れるだけ(図19、20)。必要な素材だけを抽出し、スリムなプロジェクトを生成してくれるという仕組みだ。
本稿では、あくまでも筆者目線の「良さそう」と感じた機能に絞って紹介させてもらった。特にマスク&トラック機能は「After Effectsが苦手」というユーザーを大いに助けてくれることだろう。
Premiere Pro CC以外のアプリケーションでも、もちろん進化はある。たとえば、カラーグレーディングアプリケーションのSpeed Grade CCでは、待望のカーブ調整機能が実装されている。
いずれにせよAdobeのビデオ製品がユーザーのニーズを捉え、タイムリーに、かつ柔軟に進化を遂げる姿勢には、素直にありがたいと感じる。