Premiere Proで遊ぼう!〜効率を忘れた先に見える可能性・第4回:棒人間を歩かせる
みなさんこんにちは。ずいぶん間があいてしまいましたが、Premiere Proをとことん遊び倒す連載、第4回です。
今回は、唐突ですが、「棒人間」を歩かせてみようと思います。前々から、棒人間だけは歩かせてみようと思っていたのです…いよいよ実行です!
でき上がったムービーはこちら。
絵心がいまひとつですが(笑)、一応、歩いています。
レシピ
■棒人間をつくる
主役の棒人間はタイトルツールを使ってつくります。Premiere Proのタイトルツールは、遊べば遊ぶほど使用頻度が増えていきますね。タイトルツール内にタイムラインが欲しいんですけどね〜。各パラメータを時間軸でコントロールできたら最強なんですが…。
今回のパーツは4種類。「頭と胴体」「もも」「膝から下」「うで」を別々のタイトルとして作成し、動きをつけた上で、手足をコピペして動きのタイミングをずらして「歩き」風のアニメーションにします。
■背景をつくりスクロールさせる
背景は、これもお手軽にタイトルツールを使って、左から右への横ロールタイトルにしてスクロールさせます。
つくってみよう
■棒人間をつくる
最初に棒人間をつくります。
まずは、「頭と胴体」です。静止タイトルを新規作成して、頭を楕円形ツール、胴体をラインツールを使って描きます。横向きなので、ちょこんと鼻もつけました。ラインツールで描いた胴体は、端の形状を「ラウンド」に指定してまるめました。
つぎに、「もも」、「膝から下」「うで」も同様にして作成します。この段階では、位置はあまり考える必要ありません。どのみち、つぎの行程でアンカーポイントを変更してしまうので、位置は最終的に設定し直しになるからです。作業しやすい適当な位置においておきます。
サイズだけは、あとで拡大縮小しなくていいように最終的なサイズにしておきます。
■アニメーションの準備
手足の動きは、基本的に関節を中心とした回転運動、というか振り子のような動きです。ということは、動きの中心点を関節にもってこなければいけません。
通常ですと、エフェクトコントロールを開いて基本エフェクトの「アンカーポイント」の座標で設定するのですが、ここで、のちのアニメーション作業を楽にするため、ちょっと一工夫しておきます。
「もも」と「膝から下」の動きには、親子関係があります。「もも」の回転にしたがって「膝から下」も同じように回転し、それとは別に、「膝から下」独自の回転もする、という風になっています。この親子関係がつくれればアニメーションはずいぶん楽になるはずです。
Premiere Proでは、CS6から「調整レイヤー」という便利機能が使えるようになりました。これは、Photoshopなどにもありますが、Premiere Proでは、これを配置したトラックの下のトラックが配下に置かれて同じエフェクトが適用される、というものです。
これを使えば、「もも」と「膝から下」を同時に動かすことができ、親子関係がつくれるはず。まず、これを仕込んでいきます。
V1に「膝から下」、その上のV2に「もも」を配置、その上のV3に調整レイヤーを配置します。調整レイヤーは基本エフェクトが使えないので、回転させるためのエフェクト、「変形」を適用します。そして、調整レイヤーの上に、「頭と胴体」を配置します。
調整レイヤーのエフェクトコントロールを開いて、「変形」の「アンカーポイント」のパラメータをいじります。「もも」の上端、脚の付け根にあたる部分にアンカーポイントを設定します。アンカーポイントを変更すると、全体の位置がずれてくるので、適宜「位置」パラメータを使って、所定の位置に調整します。
つぎに、「膝から下」のアンカーポイントを調整します。こちらは、基本エフェクトの「アンカーポイント」を使用して膝になる上端に設定します。これも「位置」を使って所定の場所に移動。
■歩かせる
下半身の仕込みができたので、動かしてしまいましょう。
まず調整レイヤーに適用した「変形」エフェクトの「回転」パラメータにキーフレームを打って、片道20フレームで振り子運動するようにしました。1往復めを設定したら、後はキーフレームを選択してコピペして、尺いっぱいまで動きつづけるようにします。
つぎに、「膝から下」を、基本エフェクト「回転」を使って動かします。膝を中心に振り子状の動きをつけ、片道20フレームになるように設定します。
…が、ここでちょっと問題発生。調整レイヤーの「変形」で行ったアンカーポイント設定の影響を受けて、「膝から下」の回転軸がずれてしまいます。しかたがないので、一度、調整レイヤーのトラックをオフにして、「膝から下」のアニメーション作業を行います。ちょっとオペレーション的にはカッコ悪いですね(笑)。
これもキーフレームをコピペして尺いっぱいまで動くようにします。
ここで一度動きを確認しましょう。調整レイヤーのトラックを再びオンにしてレンダリングします。
こんな感じです。わかりやすいように、背景に白をおいてレンダリングしました。調整レイヤーの影響を受けて背景の白も動いてしまっていますが、足はなんとなくうまくいっている模様。
つぎに、調整レイヤーの上に1つトラックをつくって、「うで」を配置します。
「うで」も基本エフェクトの「アンカーポイント」で「うで」の付け根に回転軸を移動させます。位置は「位置」パラメータで調整。
こちらも、「回転」パラメータで、片道20フレームで振り子運動するようにアニメーションさせます。
まだ、片足、片手なので、それぞれを複製して両足、両手にします。
まず、足部分。調整レイヤーから下、「調整レイヤー」「もも」「膝から下」を選択して、ネストします(「クリップメニュー」→「ネスト」実行)。ネストしたものを、Alt+ドラッグして複製をつくります。こうして、複製した下半身を20フレームずらして配置します。これで両足で足踏みできるようになりました。
「うで」も同様に複製して、20フレームずらして配置します。
五体満足になったところで、もう一度レンダリング。順調に歩いています。
歩いていることを確認してうちに、「頭と胴体」にも、少し上下運動を加えたくなりました。10フレーム間隔で若干上下するようにしてみました。少しかわいげがでるかも。
■背景をつくる
背景は、とにかく、横長のものをつくって、進行方向の逆にスクロールできればいいのかな、と。別途長い画像ファイルを用意してもいいですが、今回はロールテロップ機能を応用します。
タイトルメニュー→新規タイトル→クロールテロップを選択して、横ロールテロップを新規作成します。
まず、地面と空のつもりの、横長の長方形を描きます。そして、あちこちに、いろいろな長方形を配置、建物や木々のつもりです。
これを、一番下のトラックに配置します。
ロールテロップのスピードは、長さによってきまるので、棒人間が何か「滑ってる」ような感じがしたら、長くしてスクロールをゆっくりに、逆に足が地面を空振りしているような感じがしたら、短くしてスクロールを速くします。
これで、冒頭のムービー「歩く棒人間」が完成です。
見ているうちに、あまりに単純で、どうかなあ、と思い始め、早足の棒人間をもう1人増やしてみたのがこちら。背景も途中で日が暮れるようにして、ついでに足音も入れてみました。ちょっとだけ、ドラマ? が生まれたかも。
いちおう、最終的なタイムラインの様子を掲載しておきます。
いかがでしたでしょうか?
今回のポイントは、調整レイヤーを使った、下半身パーツの親子関係の作成。調整レイヤーは「複数トラックをいっぺんにカラーコレクションする」といった色調整に便利なアイテム、というイメージがありますが、こういう「動き」にまつわる使い方もありますね。
後、スクロールする背景ですが、何枚かスピードの違うものを重ねて、近景、遠景をつくってあげるとアニメ的には少しはゴージャスになると思います。
アニメーションツールとしてのPremiere Pro、お世辞にも使いやすいとはいえませんが、ゴタゴタ苦労しながら自分のイメージを形にしていく、というこの連載にはぴったりのテーマだったかもしれません。
こんな単純なものでも、いざ動いてみるとなかなか楽しい、しかも作業していく中で、自分がつくった「棒人間」に愛着も沸いてくるから不思議です。でも、名前をつけてしまうと、なにか、切なく(笑)なってしまうので、あくまで匿名の「棒人間」ということにしておきます。
では、次回はちょっと意外なところを攻めてみよう…と画策中です…。お楽しみに!