ソニー PMW-300〜レンズ交換型セミショルダータイプのXDCAMメモリーカムコーダー


 本稿は2013年11月22日発売の月刊ビデオα(2013年12月号)に掲載した記事を再編集したものです。内容に掲載当時の情報が含まれていますので、あらかじめ御了承ください。

 1/2型フルHD “Exmor” 3CMOSイメージセンサーとMPEG HD422 50Mbpsの記録フォーマットを採用し、PMW-EX3の後継機として、PMW-300が発売された(写真1)。レンズ交換可能なセミショルダーカムコーダーPMW-EX3をベースに、ハンディカムタイプで人気のあるPMW-200の上位機種として、そして最近発売されたショルダーカムPMW-400の良さを取り入れ進化している。

 PMW-300はラインナップとして、14倍ズームレンズ付属のPMW-300K1と、16倍ズームレンズ付属のPMW-300K2が用意されているが、今回は両方の付属レンズを借用することができたので、2本のレンズと共に企業映像の現場で試してみた。

テストの現場と基本セットアップ

 今回の現場は、世界最古の現存印刷物である「百萬塔蛇羅尼経」や日本機械学会の機械遺産にも登録される明治時代の日本を代表する「平野富二手引き活版印刷機」などが収納展示されている「ミズノ プリンティング ミュージアム」の紹介収録である(所在地:東京都中央区入船2-9-2 見学は要予約 Tel 03-3551-7595)。グーテンベルク「42行聖書」原葉、世界三大美書のケルムスコット・プレス印行「チョーサー著作集」、ダヴズ・プレス印行「欽定英訳聖書」、アシュンデン・プレス印行「ダンテ全集」など印刷文化史上著名な貴重書を始め、紀元前2000年頃のバビロニア王朝の円筒印章、1800年以降に製造された多種多様な印刷機が、ところ狭しと展示されている。

  展示機器の間が非常に狭いこともあり、Sachtler(ACE Lセット/自重3.9kg耐荷重最大6kg)の三脚と組み合わせてみた(写真2)。照明は、展示用のダウンライトのみでのトライである。

重量のあるセミショルダータイプ

 まず、手にして思うことは意外と重量があるということだ。サイズはPMW-EX3よりコンパクトであるが、PMW-200と比べると一回り大きい(写真3、4)。PMW-300K1としての総重量は3.9kg(14倍ズームレンズ、SxSメモリーカード×1、バッテリーBP-U30含む)。PMW-EX3の3.6kgと比べても重く、16倍ズームレンズ付属のPMW-300K2ではさらに重くなる。今回のSachtlerの三脚(ACE L)は問題なかったが、ハンディカム専用の三脚だと少し心配かもしれない。

  今回使用したバッテリーBP-U30では、装着すると80分と表示が出て、ほぼ表示どおりの動作時間であった。PMW-EX3(100分)、PMW-200(120分)と比べてもかなり消費するようで、発熱でファンが頻繁に回る。もちろん、REC時ファン停止モードも選択することができる。

 PMW-300K1には、フジノン製のVCL-614B2X1(1/2型EXマウント)というレンズが付属し、PMW-EX3に付属されていたレンズと同等の仕様である(写真5)。可変型グリップも踏襲されている。スペックも手ぶれ補正付き、AF機能搭14倍ズームレンズ(35mm換算31.4〜439mm、マクロ使用時、広角端フォーカス範囲50mm〜∞)とまったく同じである。操作性も同様で、AF(オートフォーカス)/MF(マニュアルフォーカス)が切り替えられるタイプ。フォーカスリングを本体側に引くと、Full MFモード(オレンジのラインが出る)になり、ショルダーカムと同じように、回転範囲の終わりで回転が止まる「フルマニュアルリング」を採用していて、ピント位置を感覚的につかむ使い方もできる。

 レンズ交換は、EXマウント1/2型変換アダプターACM-18(PMW-300K2には付属)や、別売りEXマウント2/3型変換アダプターACM-21(¥21万/税込)により、1/2型や2/3型のバヨネットマウントレンズを使用することもできる(写真6)。

 PMW-300は、ファインダー部を除けばハンディカムに近いサイズだが、カメラ底部のつまみを解除すると肩当てパット部が開き、別レバーで解除してスライドさせると簡易ショルダータイプとなる(写真7)。 パッド部上部には、三脚装着時使えるアクセサリー装着用のネジが切ってあり便利そうである。 通常の肩乗せタイプをイメージすると重心が前のほうにあり、非常にバランスが取り難く、必然的に両手で持っていることになる。 やはり、別売りのカムコーダーサポートが欲しくなる。ハンディカムコーダーと同様に手振れ補正(シフトレンズ方式)がついているのは、理に叶っている。

 基本はレンズ交換機能を活かし、三脚に据えてじっくり撮るほうが向いるような気がする。もちろん小回りが効くので、狭いところには、最適かもしれない。

 記録媒体はSxSメモリーカード×2(リレー録画対応)。冒頭に触れたとおり、記録モードには動きのある被写体やクロマキー合成に強いXDCAM HD422(1920×1080)50Mbps MXFフォーマットが用意されている。またXDCAM EXのMP4やIMX、DVCAMにも対応している。

ミュージアム館内での撮影

 ミュージアムの中は、全体に暗くダウンライトと所々は外光が入っている。全景のトーンは、後から調整するとして、各パーツごとに歴史的重みが出るようダウンライトを活かしたトーンで撮影していく。暖かい色味やダウンライトの光源の発色は、とても良く奇麗である。ボカシも奇麗に整っている(写真8、9)。

 陳列棚のほのかな明かりの下、貴重な収集品を撮影していく。新しいフレーム間ノイズリダクションの成果だろうか、少し暗いトーンのコントラスト、ディテールも奇麗である。最近発売されたクラス最高のPMW-400の感度F12、SN比60dBには叶わないが、感度F11、SN比60dBを達成している成果だろうか、黒を基調とした印刷機の重厚感もしっかりとしているし、動きのある人物のディテールも自然だ(写真10、11)。

 今回このカメラの一押しは、やはりVF付き液晶モニターの奇麗さではないだろうか。PMW-400に搭載されたものと同じくLCDをVFで覗くタイプで、必要により跳ね上げ、脱着が可能となっている。 解像度960×540のLCDは、156万画素でクラス最高の高精細となる(参考にPMW-200は852×480)。なにしろクリアーに見えるし、ピントの具合もかなり正確に把握できる(写真12)。モニターをもっていかないくても安心という意味では、この重さは納得できるかもしれない。

 このLCD部は、VF部を上げたりスライドさせ取りはずすと、液晶モニターとしても活用できる。撮影クリップ確認のとき、サムネイル画面を表示し、クライアント確認も簡単である(写真13)。また、OK、NG、KPのマークにより、目的のクリップを簡単に検索できるのも便利だ(撮影後サムネール画面より簡単にOK、NG、KPのフラッグが付けられる。アサイナブルボタンに登録して、ショットマークやOKマークは別途登録可能)。また、ライブもので長回ししたようなクリップなそをエクスパンド機能を使い、時間で12分割してサムネイル化させ検索可能なことも便利だ(FAT/HD:MP4フォーマット時)。

それぞれの付属レンズを試す

 今回は前述のとおり、PMW-300K1とPMW-300K2のそれぞれの付属レンズを拝借できたので、レンズ交換を含めた屋外でのテストレポートも試みた。

 まず、PMW-300K1の14倍ズームレンズで羽田沖を狙ってみた。ここで組み合わせた三脚は、Vintenのblueである(写真14)。軽量な三脚も良いが風などの影響を考えると、少し重量のある三脚のほうが安心である。日が射した屋外でもVF付きなので、高精細なLCDは一層クリアに見える。PMW-400では気にならなかったピーキングのジャギーが少し目立つ感じがする。


About 井上尋夫

国際企業映像協会(ITVA-日本)第11代会長(1982年設立の国際企業映像協会は、企業内映像担当者を中心に組織される団体)。(有)毎企画 制作プロデューサー。1995年設立の(有)毎企画で、企業用映像中心に映像社内報から教育・製品PR・リクルート・会社案内等の映像制作、HP制作、コンサルティング、育成セミナーまで幅広く活動中。 ■主な制作先: 横浜銀行、千葉銀行、三井住友信託銀行、オリエントコーポレーション、IHI、三井生命、全薬工業、相鉄フォールディングス、日本クレジット協会、SMBCコンシューマーファイナンスほか

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