ソニーFDR-AX100〜1.0型CMOS搭載の4Kハンディカムコーダー
ソニーの新しい4KハンディカムFDR-AX100は、昨年発売されたFDR-AX1よりもさらにコンパクトながら、新たな機能も搭載されているという。そこで本稿では、このFDR-AX100を試してみたい。
FDR-AX100の操作性
FDR-AX100は、片手で簡単に持つことができるサイズで、790g(撮影時915g/本体付属バッテリーNP-FV70装着)という軽さから、日々持ち歩くこともできる(写真1)。
さらにこのFDR-AX100は、フルマニュアルでの撮影も可能だ。フォーカスはもちろん、絞り、シャッタースピード、ゲインそれぞれで、オート/マニュアルの切り替えができるようになっているのだ。ボディ側面のボタンやダイヤルを使って、オートとマニュアルを簡単に切り替えられ、たとえば撮影しながら絞りだけをオートにするといったこともできる(写真2)。
FDR-AX100での4K撮影とHD撮影
FDR-AX100の最大の特徴は、やはり4K撮影が可能ということだ。ただし、このFDR-AX100が対応しているのはいわゆるUltra HDやQFHDと呼ばれる3840×2160のサイズのみである。さらに4Kモード時のフレームレートは、24pと30pの2種類となっており、59.94pには対応していない。この点では先に発売されたFDR-AX1に軍配があがる(写真3)。
では、そのFDR-AX100の4K撮影の実力を確認しておきたい。まずは、同じアングルで4KとHDの両モードで撮影を行った。画像サイズ以外の設定は基本的に同じであり、記録コーデックは「XAVC S 4K」(写真4)と「XAVC S HD」(写真5)とした。
これら2枚の写真を比べると、やはりFDR-AX100が4K解像度をもったカメラであることがはっきりとわかっていただけるだろう。木の葉などの細かな描写が、4Kモードでは、しっかりとなされている。
しかし実は「XAVC S HD」のビットレートが約50Mbpsであるのに対し、「XAVC S 4K」は約60Mbps(FDR-AX1は約100Mbps)となっており、実際には4倍の画像サイズであることから、単純計算だが「XAVC S 4K」時は「XAVC S HD」の1/3程度のビットレートで記録していることになってしまう。そのため画像を拡大して見ると、その圧縮によるブロックノイズが水面などに多数見られた。
だが、このカメラの手軽さという面をふまえると、筆者的にはそれは許容範囲内だと感じている。FDR-AX100は記録メディアにSDXCメモリーカードを使用しており、ビットレートはその記録スピードの影響もあるのかもしれない(FDR-AX1ではXQDメモリーカードであった)。
FDR-AX100の2つのHD撮影
FDR-AX100のHD撮影は、「XAVC S HD」のほかに「AVCHD」での撮影も可能である。なお「AVCHD」ではフレームレートが59.94pとなることから、「XAVC S HD」も59.94pとした(写真6、7)。
これら2つのモードの違いによる、解像感の違いはほぼ見られないが、ビットレートに2倍近い差(「XAVC S HD」約50Mbps / 「AVCHD」約28Mbps)があることから、圧縮の影響と思われるノイズの出方には多少の差が見られた。
同じHDモードであっても、可能ならば「XAVC S HD」で撮っておきたいところである。
また「XAVC S HD」のときには、120フレーム/秒でのハイスピード記録も可能となっている。このハイスピード記録を行うためには、メニューのトップ画面でのモード選択を「動画撮影」ではなく「ハイスピード撮影」を選択しなくてはならない(写真8)。
このモードでは、画像サイズがフルHDではなく1280×720となってしまい、さらに撮影したものは、カメラで再生してもスローの映像として見ることはできない。また、そのままPCへもっていったとしても、再生するソフトウェアによってはスローで再生することができないので、注意が必要である。
FDR-AX100のCMOSセンサーとレンズ
これまで、このような小型ビデオカメラのセンサーは、ボディと同様に小型のものを搭載していることが多かった。たとえば上位機種に位置づけられるFDR-AX1は、1/2.3型のCMOSセンサーとなっており、さらにコンパクトなFDR-AX100のようなカメラの場合は、通常それよりも小さいものを使っていることが、一般的である。
しかしこのFDR-AX100は、このような小型のハンディカムであるにもかかわらず、1型の大きな「Exmor R CMOSセンサー」を搭載しているのだ。FDR-AX100が、単にFDR-AX1の下位機種という位置付けのカメラかと思っていた筆者には、とても嬉しい驚きである。
センサーが大きくなると撮りたくなるのが、従来のこのクラスのカメラでは難しかった被写界深度の浅い映像だろう。
そこで被写界深度の浅い映像を撮るときに重要となるのが、レンズのボケ方ではないだろうか。低価格帯のカメラでは、そのレンズの構造も簡素化されてしまうことが多いために、たとえ被写界深度の浅い映像が撮れたとしても、美しいボケを出すことができないことが多い。
しかしFDR-AX100が搭載している12倍ズームレンズには、業務用の交換レンズにも劣らない7枚の絞り羽根(写真9)と、フレアやゴーストを抑えるコーティングをされた非球面レンズ(写真10)、そして広角時でF2.8という明るさを持ち合わせており、とてもクリアーで奇麗な映像をつくり出すことができるのである。
一般的に4K対応といわれている業務用の交換レンズと比べると、とても小さなレンズであるが、それでもきっちりと4Kの解像力を備えもつレンズといえるだろう(写真11)。
FDR-AX100にはNDフィルターも内蔵されており、それによって日中でも開放に近い絞りでの撮影ができ、被写界深度のコントロールも行いやすくなっている。
このNDフィルターだが、実は従来のカメラと違った面白い構造になっている。NDフィルターの切り替えスイッチには、1〜3までの3タイプが用意されているのだが(写真12)、カメラ内部には2枚しかフィルターが入っていない。さらに切り替えスイッチの上に、NDフィルターの「AUTO」と「MANUAL」のスイッチが備わっている。
実は、FDR-AX100のNDフィルターは電動式になっており、最も濃いND-3は、ND-1とND-2の両方を組み合わせた状態なのだ。スイッチが「MANUAL」になっていないと、いくら切り替えスイッチを動かしてもNDフィルターが動かないので、注意が必要である。
さらにFDR-AX100には、全画素超解像ズームという機能がある。これは、そのレンズの12倍ズームと組み合わせることで、4K時には画像の劣化を抑えて18倍のズーム(HD時は24倍)が可能となる機能だ。
この全画素超解像ズームを使って18倍まで寄った画像(写真13)と、光学ズームだけで最大の12倍で撮影し後処理にて18倍相当まで拡大した4K画像(写真14)を比較すると、全画素超解像ズーム機能が単なるデジタルズームではないことがわかる。
ただし、この全画素超解像ズームを使う場合にはカメラの設定上での条件がある。カメラメニューの中の「手振れ補正」の項目を、「アクティブ」にしておかなくてはならないのだ(写真15)。他の「スタンダード」や「OFF」ではレンズ本来の光学12倍のみ、もしくは12倍以上はデジタルズームとなってしまうので、ご注意いただきたい。
FDR-AX100は業務用機ではなく民生機の4Kカメラである。しかしそれは、単なる手軽な4Kカメラというだけではなく、カメラやレンズをきっちりとつくられた4Kカメラだという印象を受けた。
そのコンパクト性を活かした撮影はもちろん、従来よりも大幅に向上したという手振れ防止機能の搭載により、4Kといえど手振れを気にすることなく、手持ちでたくさん撮りたいと思ってしまうカメラである。
価格:オープン(実勢価格:¥22万前後)
発売:2014年3月14日
問い合わせ先:ソニーマーケティング 買い物相談窓口TEL0120-777-886(フリーダイヤル)
URL:http://www.sony.jp/handycam/
後日発売予定の電子書籍版「月刊ビデオα」では、高感度性能や撮影素材のプレビュー、編集など、FDR-AX100のさらに詳しい内容を、テストレポートとして掲載予定です。