パナソニックHX-A500〜4K 30p対応の最新型ウェアラブルカメラ
さまざまな映像技術のトレンドが登場するなかで、ウェアラブルカメラ/アクションカメラも各メーカーがその流れの先頭に立とうと開発にしのぎを削っている分野の1つである。小型である特徴を活かして日本ではバラエティ番組で使われているのをよく目にするが、最近では高画質化によってドラマや映画の現場にも利用されるようになってきた。
今回はパナソニックから登場した4K 30p対応のウェアラブルカメラHX-A500をお借りできたので、いくつかのシチュエーションで試した各機能と性能などを紹介したい(写真1)。
新センサーとエンジン搭載により高画質4K 30pを実現
HX-A500は民生用アクションカメラとして、世界で初めて4K 30pに対応している(2014年5月13日時点)。4K対応が限られるこの分野で、フレームレートにおいては頭1つ先行した形だ。
搭載するMOSセンサーにデジタルビデオカメラW850Mと同じセンサーを採用することで、前モデルA100から有効画素数や感度をアップ。さらに「クリスタルエンジンPRO+」を採用し、高速処理を可能にした。新しいセンサーとエンジンの恩恵を受けて、スーパースロー機能や傾き補正、ブレ補正など、高解像度と高速処理を活かした機能を搭載している。
気になるのはセンサーサイズの大型化によってカメラが大きくなり使い勝手が悪くなってないか? という疑問である。しかしその心配はまったくなく、従来機のA100とほぼ同じサイズを保ち、かつ4K撮影に対応するレンズシステムまで新たに開発。さらにA100と同等のケーブルの太さを保ちながらもA100比2.5倍の伝送チャンネルを有する設計を施して、4K 30pの高速転送を実現している(写真2)。
二体型スタイルの特徴と装着感
4Kの画質が気になるところだが、まずは外観から見ていきたい。HX-A500はカメラ部と本体部が分かれた二体型スタイルで、身体に装着あるいはどこかにカメラを設置した後でも手元でモニターを見ながら操作できるのが特徴である。筐体カラーは今回お借りしたブラックのほかにビビットな色のオレンジもラインナップされている(写真3)。
カメラ部と本体のほかには、同梱品としてアームバンドケース、ヘッドマウント、ゴムバンド、USBケーブルが付属する(写真4〜5)。
本体部にある1.5型/約1.1万ドットの液晶モニターは、小型ながらもアングルや機能を設定するには充分な大きさだ。液晶モニターの下にはメニュー選択や決定を行うジョイスティックが備えられている(写真6)。
本体側部にメディアのインサート部とUSB接続端子が備わっている(写真7)。記録メディアはmicroSD(512Mバイト/1Gバイト/2Gバイト)およびmicroSDHC(4Gバイト/8Gバイト/16Gバイト/32Gバイト)に対応。映像圧縮方式はMPEG-4 AVC/H.264で、記録方式はAVCファイル規格に準拠した.MP4である。
インタビュー撮影や着席しながら手元の作業を撮影するなど、移動を伴わない状況であればヘッドマウントのみでもズレる心配はないだろう(写真8)。
スポーツやレジャーなど動き回ってアクティブに撮影したい場合には付属のゴムバンドの使用をオススメする(写真9〜10)。
つづいて腕に本体部を収納するためのアームバンドケースを装着。マジックテープで調整できるので腕の細い方はしっかりホールドしておきたい(写真11〜12)。
何人かに協力してもらい装着感を聞いてみると「見た目よりも軽くて、ヘッドマウントをかぶった時の圧迫感も少ない」「体に沿うように装着すれば、違和感なく運動ができる」などの感想が得られた。
4K 30pの高解像度映像を体験
画質や各機能を試すため、さっそくアウトドアへ繰り出してみた。まずはロードバイクによる走行映像である(写真13〜14)。
二体型スタイルは自転車を運転するうえでなんら支障はなく、カメラを取り外さずに設定変更ができるので便利である。頭を傾けるとレンズの向きも動いてしまうのでワンマン撮影でのアングル確認は難しいが、腕を少し上げるようにして確認すれば感じがつかめるだろう。ちなみに4K撮影ではバッテリー消耗が激しいためか、ケースに入れて装着した状態でも本体がほんのりと温まっていたのがわかった。
つぎにラケットを使ったよくわからない球技に興じてみた。軽すぎる玉をうまく打ち返せずラリーをお見せできないのが残念だが、左右に移動する激しい動きでも装着したカメラのずれは感じられなかった。球技に飽きたあとはブーメランを投じたり、シャボン玉の撮影などを行った。顔に被写体が接近する撮影は面白い画が撮れる(動画1)。
動画1 ロードバイクで撮影後、球技、ブーメラン、シャボン玉などの撮影を行った
以上の自転車、球技、ブーメラン、シャボン玉はすべてオートホワイトバランスで、4K 3840×2160/30pにて撮影した。
つづいて4Kで歩いている人物を撮影し、Adobe AfterEffects CS5.5のワープスタビライザーでスタビライズをかけて安定感のある映像を作成してみた。処理によってクロップされる部分があっても、元が4Kなので画質の劣化が少なくて済むのは嬉しいところだ(動画2)。
動画2 4Kで歩いている人物を撮影し、Adobe AfterEffects CS5.5のワープスタビライザーでスタビライズをかけて安定感のある映像を作成してみた
夜間にはカラーナイトビュー機能のテストも行った。街灯のある公園を撮影してみたが違いがはっきり現れているのがわかる(写真15)。
スーパースロー撮影とWi-Fiリモートを試す
スーパースロー撮影の機能を試すためにバッティングセンターに赴き、ほぼ一定速度の球(90キロストレート)を各モードで撮影した。設定は1920×1080-60fps/30p、1280×720-120fps/30p、848×480-240fps/30pの3種類から選択が可能だ。この機能を使えば決定的瞬間や実証実験などのスロー映像を手軽に撮影できる(写真16)。
フルHDでも1/2倍速再生に対応しているので、HD用のインサート素材としても申し分ない画質である。なお、スーパースロー撮影では、音声記録、画角切り替え、傾き補正、ブレ補正、カラーナイトビュー機能が使用できないので注意が必要だ(動画3)。
動画3 スーパースロー撮影の機能を試すためにバッティングセンターに赴き、ほぼ一定速度の球を各モードで撮影した
バッティングで気分爽快になった後はドライバーにヘッドマウントを装着してもらい、車での走行映像も記録した。HDサイズは30pのほかに60pでも記録が可能である(動画4)。
動画4 ドライバーにヘッドマウントを装着してもらい、車での走行映像も記録した
バッターや車のドライバーなど、カメラを装着している人が手を離せない状況で便利なのがWi-Fi機能だ。Wi-Fi接続用のスマートフォン専用アプリ「Panasonic Image App(無料)」で本体部のリモート操作を行って、RECや停止はもちろん、撮影フォーマットの設定変更なども行える。もちろんワンマン撮影や離れた場所にカメラを設置する際にも使える機能である(写真17〜18)。
ワンマン撮影で便利な機能を搭載
ワンマン撮影での使い勝手を体験するため、単独の釣行撮影も行った。ロッドの動きやリールなどを捌いている様子が、臨場感あふれるPOVショットで収録できた(動画5)。
動画5 ワンマン撮影での使い勝手を体験するため、単独の釣行撮影も行った
4K撮影ではチャージ満タンの状態で約100分の長時間撮影が行えた。ただし、説明書に記載されている連続撮影可能時間は4Kサイズで約1時間20分、実撮影可能時間は約40分。USB給電すればさらに長時間の撮影が行える。
ループ記録モードを使用すれば、約1時間を超える撮影をした場合に停止前の約1時間だけを記録できる。本モードの場合、画素数とフレームレートは1280×720/30pに限られるが、大物を釣った際にも逃さず記録できるので、メモリー残量を気にすることなく釣りに(撮影に)集中できる。今回の釣果は映像に魚が登場しないところを見て察していただきたい。
また、このような撮影では手元の操作を撮らずに本番で使う部分だけ記録したいときもあるだろう。そんなときにはDelay Rec機能が便利である。この機能をONにしておくと、RECボタンを押してから約3秒後に記録を開始するため、釣りのシーンであれば3秒後にルアーを投げるところから記録することができる。Wi-Fiを使って屋外からYoutubeやFacebookなどにその場でアップロードしたいときなどには、余計な部分を公開せずに済む。またファイルサイズがかさむ4Kでは無駄を省ける機能なのでカット数が多くなればなるほど重宝するだろう。
もう1つ便利な機能としてマイク切り替え機能がある。撮影時の音声記録のON/OFFを切り替えられるため、記録したくない会話や騒音のある状況などで活用したい機能である。
さらにHX-A500は単体で防塵・防水性能も備わっている。今回あからさまな入水はなかったが、前述したシャボン玉などの液体を使用する際や水辺での撮影でも安心だ。夏場の突発的な雨や天候の変化が激しい山岳地帯などで急な雨に見舞われても、焦ることなく撮影できる。スペック上は水深3m/30分までの撮影が可能とのことなので、浅瀬での水中撮影や水を使ったセット撮影などでも活躍が期待できる。防水オプションが不要な点は、素早いセッティングや手軽な撮影が求められる現場ではアドバンテージになるのではないだろうか。
二体型スタイルを活かした撮影
たまたま特撮用のミニチュアセットがあったので、カメラの小型性能を活かした撮影も試してみた(写真19)。
二体型スタイルでは工夫次第で一体型スタイルのカメラとは違う手法を楽しむことができるだろう(動画6)。
動画6 カメラの小型性能を活かしミニチュアセットを撮影してみた
今回レビュー中に某庁の特殊訓練を撮影する機会があったのだが、偶然にも訓練中の方が前モデルのA100を使用していたので驚いてしまった。活動内容のアーカイブや検証用の撮影に使用していると思われたが、人命に関わるかなり過酷な現場でも活躍しているカメラであることを知り、ウェアラブルカメラの実用性を知るいい機会であった。
高解像度化によって進化したHX-A500は、今後さらに多くの現場で活躍するのではないだろうか。
- 発売:2014年6月12日
- 価格:オープン(市場推定価格:¥4万2000前後)
- 問い合わせ先:パナソニック・お客様ご相談センターTEL 0120-878-365
- URL:http://panasonic.jp/wearable/a500/