Blackmagic Studio Camera 4K〜特徴的な小型ボディにライブプロダクションの必須機能を網羅した放送用カメラ
昨年のNAB Show 2014で発表された「Blackmagic Studio Camera」は、タブレット機器のような大型の液晶パネルに、撮像素子とレンズマウントだけを組み合わせただけのような成り立ちの特異なカメラだ。
同カメラには、HD仕様と4K(Ultra HD)仕様の2機種がラインナップされており、4K(Ultra HD)仕様の「Blackmagic Studio Camera 4K」が2014年末から発売開始されている。
今年のNAB Showでは、超小型のBlackmagic Micro Studio Camera 4Kも発表されており、Blackmagic Designが推し進める、4Kライブプロダクションの姿がいよいよ見えてきた。
今回は、2台のBlackmagic Studio Camera 4Kを中核に構築した4Kライブプロダクションシステムを、メーカーであるブラックマジックデザインより借用する機会に恵まれたので、その試用レポートをお届けしよう。
世界最大のビューファインダーに対応した放送用カメラ!
まず、Blackmagic Studio Camera 4Kの成り立ちを復習してみよう。本機は記録機構をもたない純粋なスタジオでのライブプロダクション用のカメラである。
高輝度な10.1型のフルHDビューファインダーに、スーパー16サイズを若干上回るUltra HDイメージャー、アクティブ方式のマイクロフォーサーズ(MFT)レンズマウントを搭載し、SDI入出力、光ファイバー入出力(オプション)やXLRアナログオーディオ入力などを、堅牢なマグネシウム合金製のボディに包み込んでいる。
またBlackmagic Studio Camera 4Kには、ライブプロダクション用カメラとして、特徴的な装備が数多く搭載されている。
複数のカメラを使用したマルチカメラ製作の現場では、各スタッフ間のコミュニケーション製作自体を円滑化させるために欠かせないものがある。
まず、各カメラスタッフとそれをスイッチングするスタッフとの間で緊密なコミュニケーションを可能にする、「トークバック」、オンエアー中の画像をカメラスタッフへ戻す「リターン」、そして、オンエアー中のカメラを演者に知らせる「タリー」である。
これらはどれも、番組制作において、演者からスタッフまでグループワークの効率を高めるためのものだが、本機はそれをたった2本の光もしくはSDIケーブルで実現する。
さらに特徴的なのが、カメラ本体のリモートコントロールで、本機はリターン信号を介してATEMライブプロダクションスイッチャーからリモートコントロールが可能だ。同社のDaVinci Resolveのプライマリーカラーコレクターと同等のシステムを搭載し、スイッチャー側から、接続したすべてのカメラを集中的に操作することができるのである。
3840×2160 Ultra HDを支える技術
さて注目のカメラ機能について見てみよう。
Blackmagic Studio CameraのHD版は、有効サイズ12.48×7.02mmのイメージャー(スーパー16サイズ)を搭載していたが、4K版である本機には、それを若干上回る有効サイズ13.056×7.344mmのイメージャーが搭載され、最大解像度3840×2160のUltra HDビデオが24p、30p、60pのフレームレートで出力される。
特に60pがサポートされたのは特筆するべきもので、フル4Kというべき2160/60pを、たった1本のSDIまたは光ファイバーで出力する(光ファイバーインターフェースはオプション)。そもそも2160/60pの伝送には12Gの伝送帯域が必要なのだが、本機には12G仕様のSDIが装備されており、この1本でフル4Kが伝送できるのは素晴らしい(試用時点では、本機のSDIは30pの6Gまでの対応になっていたようだ)。
イメージャーはほぼ1型サイズと言えるもので、35mmフルサイズイメージャーと比して、クロップファクターは2.88倍となる。4Kを支えるのに必要なサイズが確保されているといえよう。
そのセンサーへ光を導くレンズマウントには、アクティブ方式のマイクロフォーサーズ(MFT)レンズマウントを装備。アクティブ型であることから、電子コントロール式のマイクロフォーサーズレンズがフルコントロールできる。
また本機はLANCコントロール端子をもち、レンズのコントロールはここから行えるようになっている。
HD仕様機の発売当時はフォーカス・アイリスのコントロールはできたが、電動ズームのコントロールはできなかっのだが、4K(Ultra HD)仕様機の発売時のファームウェアのアップデートによってコントロールの幅は広がり、Manfrotto製ズームオンデマンドコントローラーなどによって、一部のレンズでは電動ズーム付きマイクロフォーサーズレンズでは、ズームのコントロールも可能になった。
また、イメージャーサイズの近いBlackmagic Pocket Cinema Camera向けにはMetabonesから専用のスピードブースター電子接点付きEFマウントアダプターなども発売されている。これが使用できて、EFレンズがクロップファクターの制限を受けずに利用できるようなら、運用の幅もさらに広がるだろう。
注目の画質と使い勝手
Blackmagic Studio Camera 4Kには、惜しいことにNDフィルターの装備がないため、屋外で使うには、NDフィルターを別に用意する必要になるなど、やや運用は煩雑になるが、ビューファインダーの輝度は高く屋外での視認性に問題はない。
しかし、Studio Cameraという性格上、屋外へ持ち出されることは稀であると考えればそれほど問題とはならないだろう。このことは本機の画質の性格にも表れており、スタジオなどで充分な光量が確保できる状況だと、4Kの精細な高画質が充分楽しめる。逆に言うと低光量下では、暗部領域がややノイジーになるなど、真価が発揮できない。
使ってみて有益だなと感じたのは注目のカメラコントロール機能だ。
各カメラの集中コントロールが可能になることは、マルチカメラの画質合わせや、本番中にカメラマンの手を煩わせずにアイリスやフォーカスの調整が行えるなど非常にありがたい。こちらも惜しいのが、写真用レンズ側の制約か、アイリスなどのステップがやや粗いことだ。
またコントロールするソフトウェアであるATEMスイッチャーソフトウェアのインターフェースも、ポストプロダクション用のDaVinci Resolveを模したインターフェースであり、撮影現場にフィットしたインターフェースであるかどうかは少し疑問がある(色温度の微調整とかがやりにくい)。
しかし、ソフトウェアの問題はメーカーにユーザーからの要望が届けば改善の余地がある。聞けばメーカーであるBlackmagic Design本社は、ユーザーの声を真摯に受け止めているそうだ。改善に向けての可能性を感じるところはユーザーとしてはうれしいところだろう。
総論
メーカーとしては小規模な放送局であるとか、動画を活用したい企業や団体など、会場に常設された機器としての利用を見込んでいるそうだ。メーカー希望小売価格は¥30万4800(税別)であり、4Kカメラとして複数台数を導入したとしても、その価格競争力は強力なものがある。
マルチカメラを利用してのライブプロダクションが盛んになるにつれ、4Kとしてトータルのシステムがそろうという意味でも本機「Blackmagic Studio Camera 4K」のソリューションとしての魅力は大きい。4Kの新時代に向けて最適なスタジオシステムとなる魅力を、秘めているといえよう。
価格:¥30万4800(税別)
発売:2014年12月
URL:https://www.blackmagicdesign.com/jp/products/blackmagicstudiocamera(メーカー製品情報ページ)