キヤノンEOS C300 Mark II 〜カメラ本体記録とRAW出力での4K撮影、基本性能と操作性も向上した正統後継機


 2011年11月、キヤノンはCINEMA EOS SYSTEMの第1弾としてEOS C300を発表した。当時、アメリカでの発表セレモニーに大きな衝撃を受けたことは、まだまだ記憶に新しいところだ。

 そのEOS C300の発売(2012年1月31日)から3年8カ月の時を経て、後継機となるEOS C300 Mark IIが、2015年9月17日より発売されている。そこで本稿では、EOS C300が遂げた “Mark II”への進化を、実機を使って確かめていきたいと思う。

操作性の向上〜ハードウェア面の進化

 写真1のように、カメラ本体そのものの形状は、一見すると初代EOS C300と同じようにも見える。しかし、よくよく観察してみると、ユーザーがより扱いやすくなるように、新たな工夫が随所に施されている。

 たとえばカメラ上部に取り付けられたハンドルだが、初代EOS C300ではクイックシューに差し込んで固定する仕組みであった。しかしEOS C300 Mark IIでは、カメラ上部にボルトで固定するようになり、さらに材質も強固なものとなっている(写真2)


 さらに、ハンドルには数多くのネジ穴が設けられており、クイックシューも備わっていることから、モニターなどのアクセサリーを取り付けやすくなっている。
 安定感と使いやすさの両方を併せもったハンドルとなっているのだ。

 オーディオ以外の各入出力コネクターは、初代EOS C300と同様にカメラ本体の背面に備わっている(写真3)。ただし、初代では不評だった外部電源コネクターが、EOS C300 Mark IIではREMOコネクターへと変わっている。これによって、抜け止めのロックがしっかりとされることから、外部電源での運用時でも、安心してカメラを振り回すことができるようになった。


 さらに、外部電源による入力電圧がDC16.7Vとなったことから、Vマウントバッテリーから直接供給することも可能となっている。
 XLR4ピンではないため、専用の電源ケーブルを作成する必要があるものの、長時間撮影のような、バッテリーパック(BP-A30)では心もとないような撮影においても、さまざまな電源供給方法が考えられ、とても使いやすくなったといえる。

 また、EOS C300 MarkⅡでは、メインの記録メディアにCFast2.0カードを採用している(写真4)
 初代EOS C300はコンパクトフラッシュカードによるHD記録であったが、EOS C300 MarkⅡではCFast2.0カードにより、カメラボディのコンパクト性を保ったまま、4Kの内部記録が可能となっている(詳細後述)。


 3年ほど前にリリースされたEOS C500は、4Kカメラとはいうものの、同機の4K RAWデータに対応した外部レコーダーで記録するという手法であった。4Kの内部記録を実現したEOS C300 MarkⅡは、真の4Kカメラと言って良いだろう。

 そのほか、写真5のように側面に取り付けられた数々のボタンは照光タイプとなっており、暗い環境での撮影でもボタンを押しやすくなっているなど、かなり使い勝手の良いカメラに進化したと感じている。

XF-AVCフォーマットとCFast2.0カードによる4Kのカメラ本体記録

 EOS C300 MarkⅡの最も大きな進化は、先述したように真の4Kカメラとなったことだろう。
 しかしそれは、単に記録メディアがCFast2.0カードになったことだけで実現したわけではない。キヤノンが独自で開発したファイルフォーマット「XF-AVC」によるところも大きい。

 XF-AVCは、H.264ベースの圧縮フォーマットであるが、4KはもちろんHDの解像度にも対応している。さらにイントラフレームもLong GOPにも対応しており、幅広く使えそうなフォーマットである。
 2015年年6月25日に発売されたXC10で初めて採用され、このEOS C300 Mark IIはXF-AVCを採用した2機種目のカメラである。

 ちなみにXC10の4Kモードは、3840×2160の8ビット、ビットレートは305Mbpsのイントラフレームとなっているが、EOS C300 MarkⅡでは4096×2160を含めた10ビットで、410Mbpsのイントラフレームだ。

 従来のフォーマットであれば、画像サイズごとにビットレートは決められているものだが、XF-AVCでは、それ自体に定められたスペックはないように思われる。おそらくカメラの性能に合わせた柔軟なスペックになっているのだろう(表1)

C300MII_XFAVC_nomal_OL
 実際にEOS C300 Mark IIの画像フォーマット選択画面を見てみると、写真6のように数多くのフォーマットから選択することができる。そしてフォーマットを選ぶと、最適なビットレートが設定されるような仕組みとなっているのだ。


 このXF-AVCが新しいフォーマットということで、撮影後のワークフローを心配される方もおられるだろう。しかし、すでにAdobeのPremiere Pro CC 2015(写真7)やEDIUS Pro 8、またDaVinci Resolveなど、主要なソフトウェアでは、すでにネイティブで扱うことができるようになっており、ワークフローでの心配はほとんどないといえるだろう。

4K RAWデータ出力と外部レコーダーの組み合わせによる4K記録

 XF-AVCとCFast2.0カードを使って撮影するのが、EOS C300 Mark IIのもっとも標準的な撮影スタイルとなるだろう。しかしEOS C300 Mark IIでの4K撮影スタイルは、それだけではない。カメラ本体後部に備えられたSDI端子を使って、4K RAWファイルで記録する方法、つまり、EOS C500のような外部レコーダーを使った方法で、撮影することもできるのだ。

 EOS C300 Mark IIの4K RAWに対応しているレコーダーは、EOS C500対応のレコーダーと同様だと思われるが、今回紹介したいのがATOMOSのSHOGUNとの組み合わせだ(写真8)


 EOS C300 Mark IIには、4KのRAW出力はあるものの、4Kのビデオ信号としてのSDI出力は実装されていない。そのため、EOS C300 Mark IIの4K RAWに対応していないレコーダーでは、たとえ4Kフォーマットが記録可能なレコーダーであっても、EOS C300 Mark IIとの組み合わせで4Kを記録することができない。

 SHOGUNの場合は、ファームウェアであるAtomOSが6.5へバージョンアップした際にCanon RAWへの対応を果たしたことで(写真9)、EOS C300 Mark IIの4K RAW信号をSHOGUN内部でディベイヤーし、同じ4KサイズのProResやDNxHRファイルで記録することができるようになっている。


 SHOGUNのProRes記録では、最上位フォーマットがProRes422 HQとなる。ということは、ProRes422 HQによる4K記録のビットレートは700〜800Mbps程度なので、EOS C300 Mark IIの内部で記録できるXF-AVCの410Mbpsに対し、倍ほどのビットレートで記録できることになるのだ。さらにSHOGUNには、Canon Log 2(詳細後述)のルックアップテーブルも搭載されている。

 またCFast2.0カードをカメラに入れておけば、XF-AVCとProResのダブル記録も可能で、写真10(XF-AVC)と写真11(ProRes422 HQ)のように同時に2種類の素材をつくることができる。


 なお、この2つの素材を600%程拡大して見たところ、SHOGUNで記録したProRes422 HQのほうが若干シャープに感じたものの、ノーマルサイズではまったく差を感じなかった。
 まだまだ検証数が少ないことから、もう少し差がでるようなシチュエーションもあるとは思うが、筆者ならばビットレートの差よりも、作品ごとの用途や環境に合わせた効率の良い収録方式を選択していきつつ、もう一方をバックアップとして使っていきたい。

Canon Log 2を搭載

 キヤノンのカメラにおいて、初代EOS C300で初めて搭載された機能の1つに、Canon Logがある。初代C300は8ビット機であったものの、Canon Logを使うことによって広いダイナミックレンジを得ることがき、10ビットに近い絵づくりが可能となったのだが、EOS C300 MarkⅡではさらに進化したCanon Log 2が搭載され(写真12)、ビット深度も10ビット以上となった。

 同じシチュエーションにおいて、新しいCanon Log 2(写真13)と、これまでのCanon Log(写真14)の両方で撮影してみた。


 全体的にローコントラストに感じるのがCanon Log 2であり、特に暗部側の見え方が大きく異なることがわかるだろう。メーカー発表値では、Canon Log 2とCanon Logのダイナミックレンジの幅はあまり変わらないようだが、その途中のLogカーブに大きな違いと進化があるのだろう。

 さらにカラースペースは、EOS C500に搭載されていた広色域のCinema GamutやBT.2020が、EOS C300 Mark IIにも搭載されている(写真15)
 これらの設定は、これまでどおり別々に設定することもできるが、EOS C300 Mark IIではよく使うと思われる組み合わせがカスタムピクチャーのプリセットに入っている(写真16)。これで設定が簡単になっただけでなくミスも防ぐことができるだろう。

EOS C300 Mark IIの感度性能

 初代EOS C300は、当時でも高感度に強いカメラだという印象を受けたと記憶している。ではEOS C300 Mark IIの高感度性能は、どのようになっているのだろうか。

 Canon Log 2のベース感度がISO800であることから、ISO800からISO25600まで感度設定を変えつつも、シャッタースピードやNDフィルターの調整で基本的に明るさが変わらないように撮影してみた。
 なお、ガンマとカラースペースは、「Canon Log 2 / Cinema Gamut」という組み合わせとし、撮影データにキヤノンから提供されているLUTを適用したものが写真17〜22である。


 これら6枚を400%程度まで拡大して見比べてみると、まずISO3200までは確実に使用に耐えられるだろうと感じた。つぎのISO6400でも、作品によっては充分に使用に耐えられると思うが、これだと暗部のノイズが気になるケースも出てくるだろう。

 ということは、ISO3200〜ISO6400の間に、筆者の場合の常用感度の上限があると考える。そこで、あらためて1段階ずつ見比べてみると、ISO4000とISO5000の切り替わりにおいて、波形モニター上で暗部のノイズレベルが大きく変わることを確認した。
 もちろんこれについてもまだまだ検証数が少なく、被写体や撮影環境でも変わってくるとは思うが、ひとまず筆者が使うときの感度設定の上限をISO4000としておこうと思う。

 また写真23は、ISO2500で撮影した素材をCanon Log 2のままで切り出したものである。同様に拡大してみると、暗部を中心として全体的にノイズが多く見られることがわかる。しかし先ほど筆者は、ISO4000までを常用感度の上限とすると述べた。
 つまり、この写真23のノイズは、Canon Log 2の状態では全体に見受けられるものの、そこにLUTを適用するなどのルック調整を行うことにより、目立たなくなるノイズなのだ。たしかにクロマキー撮影のような場合には、このノイズが何らかの影響を及ぼす可能性がないとは言えないため注意が必要だが、通常の撮影においては特に気にする必要のないノイズだろう。


 つぎに、低感度設定時の様子をみておきたい。
 写真24はISO800で、そして写真25は最低感度設定のISO160で撮影し、LUTの適用と簡単なグレーディングを施したものである。


 ISO800では、明るい空の部分も飛んでおらず、階調が残っていることがわかる。しかしISO160になると、同じ明るさで撮影しているにも関わらず、空の明るい部分が飛んでしまった。
 これは、基本的にどのデジタルカメラにおいても言えることで、低感度設定で撮影すると高輝度部の許容範囲が狭くなり、そのぶん暗部の許容範囲が広くなるという特性によるものだ。EOS C300 MarkⅡにおいてもそれは同じであることが証明されたということである。

 ちなみにEOS C300 MarkⅡのメーカー発表値では、ISO800時のダイナミックレンジが18%グレーを基準として高輝度側に6.3ストップなのに対し、ISO160では3.3ストップとなっており、その3ストップ差の影響がこのように現れたのだと言える。

総評

 EOS C300 Mark IIは、初代EOS C300からハード・ソフト共にさまざまな面で進化を遂げた、真の4Kカメラだ。4K記録時のフレームレートが30fps止まりなところは残念でならないが、2Kモードにおいては最大で120fpsまでのハイスピード撮影が可能となっており、初代のマイナス面を克服したうえに、さらにデュアルピクセルCMOS AFなどの新機能も盛り込まれた、新しいデジタルシネマカメラである。
 また、レンズマウントの交換というこれまでのキヤノンのカメラにはなかったオプションもあり、ユーザーの使い方にあったスタイルをつくることができるカメラだろう。

価格:オープン(市場価格¥180万前後/本体) 
発売:2015年9月17日
問い合わせ先:キヤノンお客様相談センター TEL 050-555-90006
URLhttp://cweb.canon.jp/cinema-eos/index.html


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