ATOMOS SHOGUN〜発売から1年を経過したSHOGUNを、さまざまなカメラとの組み合わせで検証


 SHOGUNが、サイズも価格もコンパクトな4Kレコーダーとして大きな話題となり、登場してからおよそ1年が経過した。その間に、つぎつぎと新しいファームウェアがリリースされ、執筆時のバージョンは6.5(2015年12月7日に6.51がリリース)、1年前からかなり進化している。

 しかし筆者自身としては、実際の業務で使用したことがなく、これまであまり触らずにきていた。そこで、あらためてSHOGUNを検証してみたいと思う。

SHOGUNの基本仕様を簡単におさらい

 SHOGUNは、7.1型サイズの液晶モニターを搭載した4Kレコーダーである(写真1)。その大きさは、デジタル一眼カメラのような小型のカメラの上に乗せても大きすぎず、またロケのハンディーモニターとしても小さすぎることのない、程よい大きさではないだろうか。
 モニターの解像度が1920×1200であることから、7.1型ながらフルHDの解像度をもつ、とても高輝度なモニターである。

 映像の入出力は、SDIとHDMIの両方を装備しており(写真2)、SDIは12Gまでに対応、HDMIは1.4bとなっている。そのため、SDIとHDMIのどちらともが4Kに対応しており、まさにコンパクトな4Kレコーダーなのである。

 音声については、SDIやHDMIからのエンベデッドオーディオはもちろんのこと、付属のXLR 3ピンネクター(写真3)を使ってアナログオーディオの入手力も可能。入力された音声は、オーディオメニューでレベル調整もできるようになっている。


 記録フォーマットは、Apple ProRes(422 HQ/422/422 LT)とAvid DNx(DNxHR;HQX/HQ/SQ/LB、DNxHD;220x/220/145/36)。4KとHDの解像度に対応し、4Kの対応フレームレートは30pまでとなる。ちなみに、3840×2160/30pをProRes422 HQで記録した場合のビットレートは880Mbps程度。

 また記録メディアは、汎用の2.5インチSSDを、専用のマスターキャディーと呼ばれるケースにセットして使用する仕組みとなっている(写真4)。SSDは別途購入することになるため、メーカー推奨のSSDがATOMOSのWebサイトに掲載されている(http://www.atomos.co.jp/drives/)。

 なお収録時は、このマスターキャディーをSHOGUN本体の裏側にスライドさせるように取り付けるのだが(写真5)、発売当初から言われていたように簡単に外れてしまうので、使用時には充分に注意していただきたい。


 電源については、背面にソニーのL型バッテリータイプのバッテリーマウントが装備されている(写真6)。ATOMOS製レコーダーには、バッテリーマウントが2つ装備され、連続電源供給が可能な製品もあるが、SHOGUNではバッテリーを1本しか差すことができない。


 消費電力は10〜20Wで、発売当初は付属のバッテリーが2600mAhのものであったが、その後5200mAhの大きなものに変更されている。しかしそれでも、長時間使用されるときは、側面の電源入力(写真7)より外部バッテリーを使って運用したほうが良いかもしれない。ATOMOSでは、電源アクセサリーであるPOWER STATIONを用意している。

さまざまなカメラと組み合わせてみる

 SHOGUNが登場して間もないころは、ソニーのα7Sとの組み合わせばかり、紹介されていたように思う。その当時は、α7Sが高感度な4Kカメラとしてとても話題になっていたからでもあると思うが、今回はα7S以外のカメラと組み合わせて、使ってみたいと思う。

■パナソニックLUMIX GH4との組み合わせ
 まずはパナソニックのLUMIX GH4と組み合わせてみる(写真8)


 GH4はマイクロフォーサーズのデジタル一眼カメラで、SDXCメモリーカードを使用して4K(Ultra HD)動画を内部で記録できるカメラだ。発売されてもう1年半以上が経過しているが、先日新たなオプションがリリースされ(2015年9月)、V-Log Lを使った撮影が可能となった。それによって、グレーディングを前提とした業務用の撮影にも使いやすくなり、さらに幅広く使うことができるようになっている。

 SDXCメモリーカードに記録される4K動画は、ビットレートが100Mbpsであることから、SHOGUNで記録することによって数倍の情報量で記録できることになり、圧縮の影響が大幅に改善されるだろう。

 さらにGH4にはカメラのモードが2種類存在する。1つは8ビットモード、もう1つが10ビットモードだ。8ビットモードで撮影するのが通常の使い方だが、メニューから10ビットモードに設定すると、カメラ内部のシステムが切り替わってSDXCメモリーカードに動画を記録できなくなり、HDMI端子から10ビットの4K信号が出力される。
 この10ビットの4K出力をSHOGUNで受け、ProRes記録をすることで、GH4が10ビットの4Kカメラになるのだ。

 写真9がGH4の8ビットモードでSDXCメモリーカードに内部記録したもので、写真10が10ビットモードに切り替えSHOGUNでProRes422 HQ記録したものである。どちらもV-Log Lで撮影し、DaVinci Resolveで強めにグレーディングを施したものだ。


 予想していたとおり、グラデーションとなっている空の部分に、その差がハッキリと現れている。GH4は、SHOGUNと組み合わせることで、かなり大きな効果が期待できるのである。

■キヤノンXC10との組み合わせ
 つぎに、今年(2015年)6月に発売されたキヤノンのXC10とSHOGUNを組み合わせることにする(写真11)


 XC10は、CFast2.0カードに4K(Ultra HD)動画を内部で記録できるレンズ一体型の4Kカメラである。Canon Logを搭載していることから、CINEMA EOS SYSTEMのサブカメラとしても使うこともできるカメラだが、内部システムは8ビットとなっており、HDMI端子からは8ビットの4K信号が出力されている。

 4K動画をCFast2.0カードに記録するときのビットレートは305Mbpsであることから、SHOGUNを用いることで2.5倍程度の情報量を得ることができ、圧縮の影響を回避することができるだろう。

 そこで、CFast2.0カードで記録したものを写真12に、SHOGUNで記録したものを写真13に示す。両者を拡大して比較してみたのだが、残念ながら写真のシチュエーションにおいては、ほとんど差が見られなかった。そのためXC10の場合は、GH4ほどの効果はないように感じるかもしれないが、実はXC10の場合の効果は、画像だけでなく記録フォーマットにあるといえるだろう。


 XC10は、XF-AVCというキヤノンの独自フォーマットで記録する。XF-AVCは、すでにAdobeのPremiere Pro CC 2015やFinal Cut Pro X、またDaVinci Resolveのような主要なソフトウェアではネイティブに扱うことができるのだが、それでもSHOGUNで記録したProRes422 HQのほうが、格段に扱いやすいことは言うまでもない。XC10はSHOGUNと組み合わせることで、ワークフローの面で効率化が期待できる。

■キヤノンEOS C300 Mark IIとの組み合わせ
 今年(2015年)9月にリリースされたファームウェアAtomOS 6.5により、SHOGUNはCanon RAWに対応し、キヤノンEOS C300 MarkⅡ(およびEOS C500)の4K RAW出力との組み合わせも実現している(写真14、15)


 これは、AtomOS 6.4で先行して対応していたソニーFSシリーズのSony FS RAWへの対応と同様で、EOS C300 MarkⅡの3G-SDI端子から出力される4K RAWデータを、SHOGUNのSDI端子に接続することにより、SHOGUN内部で受け取った4K RAWデータをディベーヤーし、同じサイズのProResファイルとして記録する機能である(写真16)


 EOS C300 MarkⅡでの4K撮影は、基本的にはカメラ本体でのXF-AVC記録もしくは4K RAW出力による外部記録のどちらかとなるのだが、そこにSHOGUNを組み合わせることで、ワークフローを柔軟に組むことができるようになるのである。

 そこで、写真17がEOS C300 MarkⅡの内部で記録したXF-AVC、写真18がSHOGUNで4K RAWをディベイヤーしProRes422 HQ記録したものだ。一見したところ、両者はほとんど同じように見えるが、拡大してみると写真18のほうが若干シャープであることがわかる。基本的に両者の違いは、圧縮の違いとディベイヤーした機器の違いになるのだが、これによってSHOGUNのディベイヤーが優秀なことをわかっていただけるだろう。


 なおEOS C300 MarkⅡの4K RAWが入力されているとき、SHOGUNの画面にはディベイヤーされた4Kの動画が表示されている。しかしSDI出力やHDMI出力からは、いまのところなにも出力されていないようだ。ディベイヤーされた映像が出力されると、撮影現場では大変便利になると思われるので、いつか実現してくれるとうれしいところだ。

 そのほか、ARRIのAMIRAやALEXA Miniの4Kモードにおいて、6G-SDI出力をSHOGUNに接続することで4K信号のモニタリングができるようになるうえ、SHOGUN内部でフルHDへのダウンコンバートができるため、現場にあるHDビデオモニターへの出力が可能で、とても便利である。
 さらにソニーのFDR-AX30のような家庭用の4Kハンディカムと組み合わせれば(写真19)、このようなカメラでも立派な4Kカメラとして業務に組み込むこともできるだろう。

そのほかのモニタリングや収録に関する便利な機能

 SHOGUNをさまざまなカメラと組み合わせる場合、前述のFDR-AX30を除いては、Logガンマの映像を受けることが大半となるだろう。
 その際にSHOGUNでは、受けたLogの映像にLUT(ルックアップテーブル)を適用させ、表示や出力を行うことができる(写真20)


 また、カメラメーカーが提供しているLUTや、ユーザー自身が作成したLUTも、「.cube」の形式であればSHOGUNに取り込んで使うこともできるようになっているのだ。

 さらに波形やベクトルの表示、拡大表示のほか、タイムラプス機能やモーションブラー機能も備わっており、単なるレコーダーともモニターとも異なる、多機能な製品であることが実感できた。

総評

 SHOGUNは、実に多様なカメラと組み合わせることができ、それによってさまざまな効果を見込むことができる。
 そして、デジタル一眼カメラと組みわせるコンパクトな撮影から、映画やCMのような大がかりな撮影にまで、幅広く使うことができる、とても便利な機器である。

 今回はさまざまな使い方を試したのだが、その途中で不安になるような要素に遭遇することはほとんどなく、この1年でSHOGUNは大きな進化を遂げていることを実感した検証となった。今後は、筆者自身も業務で積極的に使用していこうと考えている。

価格:¥27万9000(税込)
URL

http://atomos.co.jp/shogun/(製品情報)
http://atomos.co.jp/support/(ファームウェアダウンロード)
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