オタク 手塚 一佳の2014 NAB Show速報 ・第3回


学校などのミニ放送局に人気の、ローランドブース

 ローランドブースでは、新規発表機材こそ少なかったものの、最新機材の展示の機会とあって、多くの人で賑わっていた。

 なかでも、HDMI端子でフルデジタル化されたオールインワンSDスイッチャー「VR-3 EX」は多くの来場者の注目を集めていた。同スイッチャーはフルデジタルでなおかつ軽量のため、米国では、イベント収録や部活動などの収録に活用されているようだ。また、オールインワンスイッチャーのHD版であるVR-50HDは、HDでのスイッチングと本格的な合成機能を持っているため、部活は部活でも大学などの本格的な活動記録や、あるいはプロチームの記録やちょっとした配信などに使われる傾向があるといい、こちらも大いに注目を集めていた。

 また同社ブースでは実験的な試みも行われており「R-88」音源に球体マイクを付け、それを立体処理することで、全周環境の効果をヘッドフォンでも味わえるというシステムの提案をしていた。

 同社のツールは音楽業界では特に著名で、米国で開かれるNAMMでもAIRAシリーズで大きな話題をさらった。そうした知名度を生かした映像関連製品群は、その音質の良さもあって米国でも広く受け入れられているようだ。

池上ブースでは8Kカメラの参考展示

池上ブースでは、現在8Kに注力しているということで、NHKが使っている8Kカメラのモックアップ展示を行っていた。


 また、3CMOS超高感度HDTVカメラシステムHDK-5500や、その弟分のコンパクト高感度カメラHDK-4500も展示されていた。こうしたカメラはテレビ放送だけでは無く、産業用途や監視カメラとしてなどでもなどでも大いに役立ってくれることだろう。

 

朋栄ブースで、着実に広がる高速4Kの世界

 朋栄ブースでは、同社製ハイスピード(スーパースロー)4Kカメラ「FT-ONE」の周辺機器や運用システムの充実が図られていた。

 「FT-ONE Options」と名付けられたコーナーでは「FT-ONE」のコントロールユニット、コンバーターなどが実機展示され、毎秒900コマという圧倒的な速度を持つ同カメラの運用環境を充実させていた。また「FT-ONE OPT」という光ファイバー搭載機や、4K切り出しシステム「ZE-ONE」なども展示され、大いに注目を集めていた。スイッチャーでは「HVS-XT100 “HANABI”」などを展示しており、これは、将来的に3G-SDIや4Kでのスイッチングにも対応予定となっている。

 いきなり毎秒900コマという圧倒的なハイスピード4K世界から始まった同社の4Kソリューションだが、着実に実用ラインを抑えてきていることがよくわかる。

メンテナンスと信頼のキヤノン

 キヤノンブースでは、新製品の小型業務用カメラ「XF205」を展示していた。同機はレンズ内蔵型HD収録機で、上位機種と同じ3本のレンズリングを備えており、また、ネットワーク対応も強化し、プロの現場に即応できるカメラとなっている。


 また、キヤノンブースでは、毎年恒例の米国CPS(キヤノンプロフェッショナルサービス)の出張所のほか、実際のメンテナンスサービスをガラスブース内で展示しており、これによって、キヤノンのサービスとサポートが非常に優れたものであることを実証して見せていた。

 ついに三脚メーカーからスライダー登場。Libecブース

 Libec(平和精機工業)では、今回の2014 NAB Showに合わせ、スライダーを組み込んだ三脚システム「ALLEX」を発表した。

 この「ALLEX」は、三脚本体の「ALLEX T」、75mmボールヘッド雲台の「ALLEX H」、そしてスライダーの「ALLEX S」の3つの組み合わせからできているシステム三脚だ。「ALLEX」は上記の3点セット((ALLEX S Kit)で10万5000円と非常に廉価なシステムながらも、インディーズ映画やローバジェット業務映像程度には充分な性能を備えた優れた仕組みとなっている。

 なかでもこのシステムを特徴付けているのが「ALLEX H」雲台で、通常の75mmボール部分の下3分の1をネジで外すことができ、このネジが本題側では無く固定ハンドル側に付くことで、フラットヘッドに切り替えることができるという仕組みになっている。これにより、同じ雲台を使いながらも三脚とスライダ両方での運用ができ、システムの可能性を大きく広げている。

 また同社だけではなく、主要三脚メーカーからは初めての発売となるスライダー「ALLEX S」も、8つのグリス入り特殊ボールベアリングによって、雲台同様の「粘り」のある操作感を実現した。これにより、スライダーに載せた「ALLEX H」のハンドルを握りながら操作をすることで、雲台とも一体感のあるスライダー運用が可能となっている。さらに「ALLEX H」をもう1つ付け加えることにより、スライダー「ALLEX S」自体の角度調整もできるようになり、これによって縦方向への動きも実現している。

 もちろん、安価なシステムではあるので、カウンターバランス調整やトルク切り替えはできず(日本版は3kg、海外版は4kgの耐荷重量となっている)、両方とも固定のものだが、価格と使用目的を考えれば充分な性能だといえるだろう。パナソニックの「DMC-GH4」や、ソニーの「α7S」など4K撮影可能な一眼カメラが多数出てきた今回の2014 NAB Showにおいて、それら主役を支えるのに最も適切な1本が、この「ALLEX」シリーズではないだろうか?

ランサーリンクでは、モバイル向けH264エンコーダーを開発発表

 一昨年、初参加でNAB Showの出典賞を勝ち取って一躍有名となったランサーリンクでは、受賞製品の上位版である現行のワイヤレス映像送受信機「5GHz SKYWAVE SORALIS」の展示のほか、開発発表としてモバイル向けH264エンコーダー「Lancerlink’s H264 Video Encorder」を展示していた。

 これはHD映像をスマートフォンやタブレット機器などに送信することで、それらを簡易モニターのように使おう、という仕組みだ。実際、量産効果のお陰でこうしたモバイル機器のモニターは、業務用の平均的なものよりも遥かに高精細高機能なものとなっており、実際、モバイル機器を簡易モニターとする業務機は増えている。この装置はそうした対応のない機器でもモバイル機器を利用できるようにするもので、発売が楽しみな製品だ。

 ※本稿は、速報という観点から、即時性を重視して情報をお届けしております。その性質上、後日、記述内容に修正が入る可能性がありますこと、あらかじめご承知おきいただけますと幸いです(編集部)


手塚 一佳

About 手塚 一佳

 1973年3月生まれ。クリエイター集団アイラ・ラボラトリ代表取締役社長。東京農業大学農学部卒、日本大学大学院中退、小沢一郎政治塾8期卒、RYAショアベースヨットマスター、MENSA会員。学生時代からシナリオライター兼CG作家としてゲームやアニメ等でアルバイトを始め、1999年2月に仲間と共に法人化。アニメは育ってきたスタッフに任せ、企画・シナリオの他、映画エフェクトや合成などを主な業務としている。副業で鍛冶作刀修行中!

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