オタク 手塚一佳のPHOTO NEXT 2014レポート


 写真のイベント、PHOTO NEXT 2014が6月17〜18日の2日間にわたって東京ビックサイトにて開催された。開催5周年目の同イベントだが、ブライダル系の写真イベントとして始まり、いまでは広く一眼動画映像を含めたフォトビジネス全般を取り扱い、来場者3万人を超える一大イベントに成長している。今回はそのイベントの一部をご紹介したい。

ケンコー・トキナー & ケンコープロフェショナルイメージングブース

 ケンコー・トキナーでは、ケンコープロフェショナルイメージングと共同でブースを出し、中判カメラバック用オプティカルベンチモジュールカメラ「HORSEMAN Axella」を展示していた。ハイエンドなスタジオでのブツ撮りに必須のアオリ操作や同じレンズでのフランジバック延長によるズーム、そしてなにより大判用レンズの装着などを実現する優れたカメラ機構だ。

 同カメラは、それ単体では撮像機構を持たないマミヤ645向けの中〜大判カメラ機材だが、カメラバックの代わりにEOS MountやF Mount 、E Mountなどの装着オプションも用意されていて、それらのカメラを使うことで、比較的安価にスタジオでのブツ撮りを実現させることができる。本体もこの手のカメラにしては格安の58〜59万円で、デジタルならではの恩恵といえるだろう。最近増えつつある、一眼動画によるスタジオブツ撮りの需要を考えれば、決して、われわれ動画屋も注目しないわけにはいかない製品だといえる。

 また、カラーメーターAsenseTek Lightning Passportシリーズの取り扱いが始まるということで、注目を集めていた。同機種は、スペクトルメーター(分光光度計)をカラーメーターに応用したシリーズだが、その演算処理をiPhoneやiPadで別途ダウンロードできるソフトウェア「Spectrum Genus Mobile」で行うことで大幅にコストダウンしたものであり、従来機種ならば数倍の価格帯であったものを、本体22万円台(スタンダードモデル)にまで一気に引き下げることに成功していた。コントロールはBluetooth経由で行う。有料のアプリSpectrum Genius Transmittanceを使えば、透過光の減算測定も可能だ(ただし、定常光のみで、フラッシュ光源には未対応)。

 筆者もさっそく購入して使ってみているが、CRI 15種の全データを一目で見ることができるなど、その性能は抜群。照明初心者向きの百科事典もソフトに入れてあり、照明用語がわからない人でも照明ができるように工夫されている。380nm〜780nmまでの可視光線範囲のみの測定とはいえ、8nmのバンド幅精度の機械だ。大学時代に数百万円で実験室に鎮座していたのと同程度以上の機械をiPhoneに付けて持ち歩けるというのは、なんとも贅沢な時代だ。

 同ブースでは照明機材も取り扱っており、なかでもLED照明PHOTOFLEX NorthStar Liteは消費電力100Wでありながら、1000W相当の光量を持つLEDライトで、非常に高品位な光をもっていた。ソフトボックスを付けても非常に自然であり、すでにLEDライトといえども実用領域にきた、ということを実感させるライトであった。

 そのほかにも、去年の秋にIBCで展示発表された新しい望遠系のシネマレンズTokina 50-135 T3 Cinema Lensなど、日本初公開製品が目白押しの状態であった。

キヤノンブース

 キヤノンブースでは、ウェディング中心のイベントながら、なんと、Cinema EOSを前面に出したブース展開をしていた。動画ユーザーとしては嬉しくなってしまった。これは、ウェディングなどのブライダル撮影においても、シネマ風の映像が増えている影響とのこと。実際ブースでは、関一也 氏の星空ウェディングの4K撮影についてのセミナーが大盛況であった。

 そのほかにも、キヤノンブース内にはサードパーティなどのさまざまな出展があり、なかでも、Grass ValleyのEDIUS Pro 7は、EOS-1DCを始めとする4K素材との相性の良さで大々的な展示をしていた。実際、筆者もEOS-1D Cユーザーだが、その編集速度では、他のあらゆる編集ソフトの追随を許さないスペックを誇っているのが同ソフトだ。Windowsソフトであるためかカラーグレ−ディング周りが弱いのが難点だが、逆にいえば、撮って出しの高速性を求められるブライダル撮影などでは最適のソフトといえるだろう。

EIZOブース

 EIZOブースでは、2014 NAB Showで発表されていた2種類の4Kモニターに、外装が付いてのお目見えとなっていた。

 なかでも31.1インチ型のほうの外装には、オートキャリブレーションセンサーが搭載されることがわかるモックデザインとなっていて、いよいよ完成度が高まってきたことがわかる展示であった。

 両モニターの実売はこの秋〜冬ということで、非常に楽しみだ。

銀一ブース

 銀一ブースでは、ATOMOS社の新型モニタレコーダ「SHOGUN」と、新発売の「NINJA STAR」の展示を行っていた。

 「SHOGUN」はCine Gearで既報の通り、ついにフル4K対応まで果たしたRAW/Prores対応のモニタ兼レコーダーで、発売が9月に決まったこともあり、また、パナソニックの話題の新型カメラ、DMC/AG-GH4対応ということもあり、大いに注目を集めていた。

 また、「NINJA STAR」は、ちょうど発売開始ということで、ジンバル撮影や流行りのドローンによる空撮などの用途目的のユーザーが次々にブースを訪れていた。

平和精機工業ブース

 平和精機工業ブースでは、話題のLibecブランドの新型レール & 三脚システム「ALLEX」を始めとして、さまざまな三脚やジブクレーン、そしてレールなどが並んでいた。
 なかでも注目だったのが、前述の「ALLEX」で、これは、油圧ボールベアリングを仕込んだレールという、実に三脚メーカーらしい逸品。

 そしてもう1つの注目が、カメラリモコンであった。なかでも、パナソニックDMC/AG-GH4に対応したZFC-H5DやZC-3DVは、同機を動画機として使うユーザーが多いだけに、大いに注目を集めていた。

エヌ・イー・ピーブース

 エヌ・イー・ピーブースでは、さまざまなバッテリーやLEDライト機器を展示していた。対応が早いことで知られる同社製品だけあって、ブース内は数多くのバッテリーや機器で溢れかえっていた。

 なかでも筆者が注目したのが、マルチ電源コンバートプレート、PV-DVmultiシリーズだ。このシリーズの最新機器では、Vマウントバッテリー1つから、DC5V、DC8.4V、DC12V、DC15V(バッテリーそのまま)を取り出すことができ、そのほかにも、2口のUSB出力と、なんと、HDMIの分岐まで備えているというから驚きだ。

 電源もさまざまな仕様で混乱し、HDMIの口数が足りなくなることの多い一眼動画撮影においては必須ともいえるプレートではないだろうか? 定番のバッテリーだけではなく、こういう驚くべき発見があるのが、同社ブースの面白いところだ。

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 このように会場を回ってきたが、他にも面白いブースが無数にあり、すべてご紹介できないのが大変に残念だ。

 正直、元々がブライダル系のイベントだけに、筆者はこのPHOTO NEXTではビデオα読者にはご紹介できるものはほとんどないだろうと思っていた。しかし、こうして実際に回ってみると、動画用に使えるものばかりであり、いよいよスチルカメラマンの動画進出が実際の現場にも広く浸透してきたのを感じることができた。

 思えば、昨今の動画ブームの火付け役は、間違いなくスチルカメラであるEOS 5D MarkⅡのオマケ動画機能と、それをアップするためのネット環境の誕生であった。それを考えれば、こうした写真系のイベントに動画機材が揃うのは一種当たり前のことでありこうした盛り上がりも不思議ではない。筆者のような純粋な動画人間には考えつかないような機材応用や撮影方法も展示され、本当に学ぶべき部分の多い展示会であった。

 来年の開催も楽しみでならない。


手塚 一佳

About 手塚 一佳

 1973年3月生まれ。クリエイター集団アイラ・ラボラトリ代表取締役社長。東京農業大学農学部卒、日本大学大学院中退、小沢一郎政治塾8期卒、RYAショアベースヨットマスター、MENSA会員。学生時代からシナリオライター兼CG作家としてゲームやアニメ等でアルバイトを始め、1999年2月に仲間と共に法人化。アニメは育ってきたスタッフに任せ、企画・シナリオの他、映画エフェクトや合成などを主な業務としている。副業で鍛冶作刀修行中!

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