RED DRAGON Tour 2014 in Tokyo〜ハリウッドに見るRED最新ワークフロー
去る6月11日に月島スタジオにて、RED Digital Cinema(米国)/レッドディジタルジャパンによる「RED DRAGON Tour 2014 in Tokyo」が開催された。
同社からは、今年から6Kに対応する新しいセンサーとして注目のDRAGONが出荷されている。イベントの第一部では、このDRAGONを使って撮影された映画「トランスフォーマー/ロストエイジ(以下、トランスフォーマー4」にDIT(デジタル・イメージング・テクニシャン)として参加したSteve Freebairn氏が登場。ハリウッドの映画撮影現場におけるREDを使ったワークフローを紹介した。
第二部では、DRAGONの特徴を伝えるデモ映像の上映と解説が行われ、第三部ではアドビシステムズ株式会社によるAdobe CCの新バージョンとの連携が紹介された。また会場ではパートナー各社による最新機器の展示なども行われた。
第一部:ハリウッド撮影現場でのREDワークフロー
Steve氏はこれまで、REDを使った映画「アメイジング・スパイダーマン(日本公開2012年)」や「華麗なるギャツビー(日本公開2013年)」などの現場でデータを管理してきた。ハリウッドでは毎日早朝から日が沈むまで厳格なルールと時間管理のもとに撮影が行われ、撮影の合間には休憩期間をしっかりとることも重要とされる。データ管理の作業に長い時間がかけられないため、フットワークの軽い2〜3人でプロジェクトを回してきたという。
まずは長期間の映画撮影において重要なバックアップについて解説が行われた。REDで撮影したデータに保険を適用するには、最低2つのLTO(リニア・テープ・オープン)にバックアップをとることが要求される。
このLTOは長期保存を目的としたアーカイブ用の磁気テープメディアである。従来のバックアップ作業はポストプロダクションサイドがGB単位で課金して行っていたが、現在はDITがこの作業を引き継いでいる。
LTOはHDDのように読み込みや書き込みがスピーディに行えないので、マスターとしてSASのRAIDも利用している。1500Mbpsのスピードが出る複数のRAIDを用意して、全プロジェクトが終了した後にマスターのコンピュータにデータを集約するという作業を行っているそうである。ドライブの名前やフォルダのストラクチャーに関しても、撮影前にポストプロダクション側と綿密に話し合う。各カメラを現場でスムーズに操作できるよう、こういった情報をシェアしていくことも大事であるとSteve氏は語った。
カメラのセットアップについての解説も行われた。REDに関してはファームウェアのアップデートによって機能が改善もしくはプラスされていくので、常に最新のファームウェアになっているかチェックするのがとても重要である。
「トランスフォーマー4」のマイケル・ベイ監督はレンズを多く使うので、カメラ側の設定をすぐに変えられるスピーディさが求められる。あらかじめ各レンズや解像度に対してのプリセットを作成しておきつつ、各解像度に対してのフレームガイドも作成。テスト撮影ではポスプロまでデータを回し、セッティングに問題がないかを確認している。
セットアップ時に非常に重要なことは「撮影する側のアーティスティックな感覚を尊重すること」とSteve氏は述べている。マイケル・ベイ監督はレンズが大好きなので、非常に多くのカメラのボディーを用意して、どのボディーと相性がよいかまでテストしている。また、カメラ周りのアクセサリー類を外し、EPICのSDI出力を利用して、モニターなどの他の機材を小型のバックパックに収納したミニマムなセットも用意した。この軽装備は細かなレンズコントロールが要求されるときに重宝したそうである。
「トランスフォーマー4」では、最終仕上げが4Kで行われることが決まっている。「ほとんどの映画では4Kフィニッシングは行われていないためエキサイティングなことだ」とSteve氏は語った。
第二部:DRAGONセンサーについて
第二部では、イギリスのJohn Marchant氏が撮影したDRAGONのデモ映像が披露された。この映像ではセンサーの性能を調べるため、過酷な8つの設定でテストを行っている(テストの参考画像)。各状況はRAW映像、Logの映像、LATを適用した映像の順に構成されている。
カメラは2台使用しており、カメラAが25fps、カメラBが100fpsで撮影。REDCODEの圧縮設定はカメラAが5:1、カメラBが15:1。Steve氏の評価としてカメラAとカメラBの映像は、ほとんどその違いを見ることができなかったとのことである)。
なお、すべての撮影において昨年NABで発表されたMotion Mountを使用している。Motion Mountはグローバルシャッター仕様のため、CMOSの弱点であるフリッカーやローリングシャッターを解決する。
デモ上映後の解説で、Steve氏はDRAGONの特筆すべき性能として、解像度、ダイナミックレンジ、そしてカラーサイエンスの3つを挙げた。
まず、高解像度で有利な点はダウンコンバート時の質感の向上である。従来のMXセンサーの13.8メガピクセルに対して、44%向上したDRAGONセンサーは約19.3メガピクセルの解像度をもつ。ダイナミックレンジについては従来のMXセンサーより、2.5〜3以上はレンジが広がっている。そして、REDはオプションが常に充実しているので、最新のカラーサイエンスを適用できることがメリットであると述べた。
最後に行われた質疑応答では、最近のREDのニュースとしてREDCINE-XがOpenGLとCUDAサポートを開始したことを挙げた。これにより、最新のMac Proで5Kフルフレームのイメージがリアルタイムで再生できたという。RED ROCKET-XとThunderbolt、GPUを持ち運ぶことで、解像度を下げればMac Book Pro上でも再生が可能とのことである。
第三部:Adobe CC 新バージョンとの連携
今回あらたにリリースされたAdobe CCの新バージョンでは、ディベイヤーのGPU高速処理機能を搭載したことで、Premiere ProでREDのディベイヤーをnVIDIAやATIのGPUで高速に処理できるようになった。アドビシステムズによるプレゼンテーションでは、実際にPremiere Proの「プロジェクト設定」からレンダリングの設定を選択、GPU高速処理をONにして再生デモが行われた。
前述の通り、MacのOpenGL環境でもGPUの高速処理が可能になったため、Mac Proの本体のみで、RED 4K 24コマの素材がスムーズに再生されていた。
また、新機能としてマスタークリップエフェクトも紹介された。従来のバージョンではエフェクトコントロール内にあるエフェクト情報をコピーして、ペーストすることで他のカットに同じエフェクトを適用していた。これに対してマスタークリップエフェクトはその名の通り、マスターのクリップにエフェクトをかけることができるので、同じクリップのカットにエフェクトをかけたい時に煩雑なコピー&ペースト作業が必要なくなる。デモではSpeed Gladeで適用したグレーディングデータを、マスタークリップのR3Dファイルに適用。タイムライン上で同じクリップが使われている箇所であれば、すべて同じグレーディングが適用できるところをアピールしていた。
このほか新機能として、AfterEffectsのグリーンバック合成の抜け具合が向上された点やDCP(デジタルシネマパッケージ)出力についても解説が行われた。DCPでは、ラッパー:MXF、圧縮方式:JPEG2000、フレームレート:24.00の書き出し方式がPremiereとMedia Encoderで標準対応している。これにより、REDで収録したデータのDCP出力までをカバーすることが可能となっている。