オタク 手塚一佳の自腹レポート〜EOS-1D Cを小規模撮影で使いこなす ・第1回
必須機材編 その1
キヤノンCINEMA EOS SYSTEM EOS-1D C(以下EOS-1D C)は、2012年末の発売以来、唯一の4K対応一眼レフシネマ機として使われてきた。その画質はハイエンドシネマカメラに迫るものであり、筆者も発売直前のフォトキナでの実機展示で触って感動し、発売と同時に購入して現在に至っている。しかし、このEOS-1D Cは小型筐体ながら本格的なシネマカメラであり、ワンマン撮影などの小規模撮影には工夫が必要だ。
これからの数回に渡り、筆者が同カメラを自社で購入し1年間使ってきて、実際に役立った工夫をご紹介していきたい。
EOS-1DCというカメラの特徴
EOS-1D Cというカメラは大体105万円程度という、その実売価格からは信じられないほどの高画質4K映像を誇るシネマカメラだ。オーバークランクを持たず通常速度の24p撮影までという制限こそあるものの、その映像は1千万円近いハイエンドシネマカメラと比較してもまったく遜色がない。もちろん映像サイズも4096×2160のフル4Kだ(PALエリア向けに25pモードもある)。
このEOS-1D Cの画質の秘密は、低圧縮収録とセンサーサイズにある。
まず、EOS-1D Cの4K撮影収録はMotion JPEG形式だ。これはつまり、パッケージこそMOVファイル化されているが、中身はスチル写真でおなじみのJPEGファイルの連番であることを示している。1フレームごとが独立しているため非常に加工性が高く、合成との相性もよい。圧縮度合いもかなり低く、筆者が実際に使って見ている限り、おおまかに550Mbps程度が最大値で530Mbpsあたりが平均値のようだ。
これは、既存他社でいうとREDCODE RAWでRED Digital Cinemaが商用映画向きに推奨している6:1圧縮時の4Kデータレート(約450Mbps)よりも100Mbpsほど大きい数字であり、JPEGという比較的古い圧縮形式を採用していることを考慮しても商用映画実用レベルの低圧縮率であるといって良い(筆者の率いる会社は合成業務に強いが、現状の日本国内での映画の合成はJPEG連番ファイルに対して行うことがまだまだ多いことからも、Motion JPEGというのは現実的な選択だ。RAW連番はまだ機材的に難しい作業環境が多い)。
このMotion JPEGの膨大なデータレートを安定して維持するため、EOS-1D Cの記録媒体はUDMA7のCFカードの中でも特に高速な100MB/s(800Mbps)以上の高速かつ高信頼ものに限られる。
また、センサーサイズも画質の秘密だ。
実はこのEOS-1D Cは、4K撮影時のセンサー有効面積がシネマ機定番のS35サイズ(おおまかにAPS-Cに近似)ではなく、それよりも一回り大きいAPS-Hサイズなのだ。センサー面積自体が大きいため画素ピッチに余裕があり、またボケもつくりやすいところから、本体価格に比して信じられないほど美麗な映像が撮れる仕組みだ。
筆者はこうした低圧縮やセンサーサイズを「EOS-1D Cの画質はチートだ」といういい方で表現している。チートとはネットゲームなどでの不正データ書き換えによる最強キャラづくりなどを指す単語であるが、EOS-1D Cはそういう従来の常識とは少し違うカメラづくりをすることでまさにチートといっても良いくらいの画質を誇っているのである。