Avid Artist|DNxIO〜インプレッション:多彩な入出力を備えるビデオI/Oインターフェース、他社アプリでも利用可能
Avid Artist|DNxIO(以下、DNxIO)は、SD・HD・2K・Ultra HD・4Kのメディアをキャプチャー&再生する最新のビデオI/Oインターフェースだ(写真1)。
現在4Kコンテンツの制作が本格化し始めているが、DNxIOのように外付けBOX(Brake Out Box:BOB)形式の4Kキャプチャー可能なビデオI/Oインタフェースは大変珍しい。4Kコンテンツ制作サイドの現場では、DNxIOのようなハードウェアを熱望していた人も多いはずだ。
DNxIOは2015年9月より出荷開始となっているが、本記事は出荷前の試作機を拝見して執筆している点を御了承いただきたい。今回は詳細な検証をすることはできなかったので、いずれレビュー記事をお届けしたいと考えている(写真2)。
豊富なインターフェースで多様なビデオ/オーディオ機器に接続可能
これまでAvidからは、Nitris DXとMojo DXというBOB形式のビデオI/Oインターフェースが発売されてきた。今回のDNxIOはこれらビデオI/Oインターフェースの後継機種にあたるが、DNxIOは開発方法から前機種とは一線を画している。
これはどういうことかと言えば、DNxIOはBlackmagic Designから発売されるUltraStudio 4K Extremeをベースに開発されているのである。
ノンリニア編集アプリケーション Avid Media Composerは数世代前から、Avid open I/O規格に準ずるサードパーティー製ビデオハードウェアを、純正ハードウェアとまったく同じようにビデオI/Oインターフェースとして利用できるようになった。DNxIOもAvid open I/O規格にしっかり準じて開発されており、本体の基本ベースを専門デベロッパーに委ねることによって、ハードウェアの開発コストを圧縮し製品価格を大幅に下げることが可能になっている。
なお、DNxIOのハードウェアには、Avid独自のDNxHRコーデックチップの追加搭載や、Media Composerのキャプチャーツールやオーディオパンチインツールにハードウェアレベルで対応するカスタマイズが施されている。
したがってMedia Composerでの使用を前提とする場合、UltraStudio 4K ExtremeでなくDNxIOを購入する必要がある。
DNxIOの前面(写真3)と背面(写真4)を示す。背面側は、BNCコネクターがやたら沢山あるというという印象だ。
DNxIOは4系統(A・B・C・D)のSDI入出力をもつ。A・B系統は6Gbpsおよび12GbpsのSDI規格に対応、SD/HD/2K/Ultra HD/4K信号の入出力を行う。さらにC・D系統はクアッドリンク用信号対応の入出力だ。これらの入出力コネクターを介し、SDI信号はシングル/デュアル/クアッドリンク方式の入出力が行える。信号形式4:2:2と4:4:4そして2D/3Dは切り替えで対応する。
またDNxIOは、そのほかのビデオ入出力として、アナログコンポジットおよびコンポーネントI/O、光デジタルI/O(12Gbps、モジュールは含まれない)、HDMI 2.0(typeA)、オーディオ入出力としてはアナログXLR-4ch入出力とステレオRCA入力、そしてAES/EBUを備えている。
そのほか、リファレンス信号入力、タイムコードI/O、RC-422リモートコントロールコネクターが装備され、DNxIOとホストコンピュータ間の接続は、PCIExpress(1系統)またはThunderbold(2系統)を使用する。
コストパフォーマンスに優れたオンライン編集システムを構築可能
筆者は、DNxIOの一番の魅力は価格だと思う。Avid Media Composerによるノンリニアスタイルのオンライン編集室を設計する際、このDNxIOを選択すれば、システム導入コストはかなり下がる。
現在、ファイルベース収録メディアの普及によって、オンライン編集室におけるメディアの取り扱いスタイルはかなり変わってきている。筆者の身近でも、オンライン編集室でメディアのキャプチャー作業はほとんど行われなくなった。また編集を終えたコンテンツの納品も、テレビ番組以外はファイルベース納品に変わってきている。
もはやノンリニア編集室では、ベースバンドのコンテンツの使い道はマスターモニターへの入力ぐらいのみ、と言っても過言ではない。
このような現状では、筆者は従来のBOBが必要だとは言いにくい。単に映像をモニタリングするだけなら、筆者が以前レビューしたBlackmagic DesignのIntensity Proのようなオンボードカードがあるからだ。
しかし、フィニッシング専門のオンライン編集室では、正直なところIntensity Proは機能的にかなり能力不足だ。だからといってこれまでのBOBは高価すぎてコストパフォーマンスが悪い。ファイルベースメディアの台頭以来、このアンバランスな状況を解決する高機能で低価格なBOB、つまりDNxIOの出現を待ち望んできたのは筆者だけではないと思う。
DNxIOについて特に筆者が着目している機能は4Kメディアのキャプチャーだ。たしかにすべてのオンライン編集室において、4Kコンテンツをキャプチャーするニーズがあるとは思えない。だが、ドラマやCMなどの収録スタジオにおいて、4Kコンテンツの信号伝送形式(シングル/デュアル/クアッドリンク)を気にせず、ベースバンドの4Kコンテンツをダイレクトに共有ストレージなどにキャプチャーするニーズは確実に高まりつつある。
ベースバンドの4Kメディアを、ダイレクトにフレーム内圧縮コーデックであるDNxHRを使ってキャプチャーすることは、画質、メディアのハンドリング性の面において、十二分に意味があるはずだ。
前述のように、今回はMedia Composerとの機能連携や4Kメディアのキャプチャーなどの検証は行えなかった。そしてDNxIOには、筆者が気になるもうひとつの機能であるカラースペースの変換機能も搭載されている。この機能は、納品フォーマットにHDとUltra HDで混在する、数年後の日本のオンライン編集室には必須の機能だと思う。こちらもテストしてみたいものだ。
最後にDNxIOは、Avid Media Composerのほか、Adobe Premiere Pro CC/After Effects CC、Apple Final Cut Pro X、Blackmagic DesignのDavinci ResolveなどのアプリケーションのビデオI/Oインターフェースとして利用できる。これもDNxIOのコストパフォーマンスを上げる一因だ。
価格:
・Avid Artist|DNxIO単体;¥48万6000(税別)
・Avid Artist|DNxIO with Media Composer/永続ライセンス;¥61万(税別)
・Avid Artist|DNxIO with Media Composer/年契約サブスクリプション/2年;¥61万(税別)
発売:2015年9月
URL:http://www.avid.com/JP/products/Artist-dnxio/specifications#overview(メーカー製品情報サイト)